甘いお酒は足に来るんだって。
呑みやすいからついつい呑んじゃって、気付いたら立てないって感じなのかな?
経験ないから判らないけど。
目の前に転がるカクテルのビンと屍を前にそんなことを思う。
「で?この状況はなんなんだ?」
外に呑みに行った幸人が散々な有様にあからさまに嫌悪の溜息を吐く。
「んーーーー?泥酔?」
困ったように笑えば更に深い溜息が零れる。
「まったく、いくらエヴォリアンが夜中に攻めてくる事がなかったからって絶対というわけではないのだぞ。
気を抜きすぎなんじゃないのか?」
事あるごとになにやら理由をつけては酒を呑む口実を作りそのたびにこうやって朝まで恐竜やの和室で雑魚寝をする。
この一年足らずで何度見かけた光景だろうか。
「お前はアスカを起こせ」
「ハ〜〜〜イ」
「おい!今中!らんる!!起きて部屋に戻れ!」
未成年の飲酒を咎めるほど人間出来てはいない。
今時呑めるのに呑まない奴などいないだろうということで見て見ぬフリをしているのだ。
らんるの酒量を知っていた幸人は最近自棄酒のように煽る姿を痛々しいと思った。
だから、ほんの少しだけ優しくなる。
「あまり…無理をするな……」
気持ちは判る。
その感情がどうしようもないものだということも。
だから酒の力を借りて眠りにつこうとするのだけは見ていられないからやめて欲しい。
頬を軽く叩いて目覚めを促す。
「らんる…」
「うあ〜〜〜ゆきと…さん?」
「一応女だろう?部屋に戻って寝ろ」
「一応ゆうな〜〜…って…ああ、また寝ちゃったんだ…」
両手で顔を隠すと自嘲気味に笑った声がくぐもる。
「らんる?」
「ごめん。戻る。ほら、エミポン部屋行くよ」
酔って寝入っても寝起きのいいらんるは隣で同じように眠る笑里の頬をパシパシと叩いて起こす。
「ぐはっ!痛いですよ!」
若さゆえかやはり寝起きのいい笑里は飛び起きると自分の頬を叩くらんるの腕をとる。
「あれ?らんるさん?もう朝ですか?」
「違うよ」
「あーーー!もっと寝たかった!」
夜明けまではまだ十分に時間はあるのだがそんな事はどうでもいいのだろう。
今、寝たいのだから。
そんな二人に構う気のない幸人はアスカを起こすのに苦戦している凌駕の背後にそっと立った。
「アスカさーーーん!俺たちじゃ運べないんですから起きてくださーーーい」
「そんなんでこいつが起きるわけないだろう」
後ろから掛けられた声に振り返ると仁王立ちした幸人の足が振り上げられる。
「どけ」
「三条さん…?……!?」
きょとんとしている隙に振り上げられた足がアスカの脇腹に落とされる。
「こいつの起こし方はこれで十分だ」
ドカッ!!
「ぐえっ!!」
蛙を潰したような声を出してアスカの目がゆっくりと開けられる。
「あーーー幸人さん、凌駕さん…おはよーございます〜〜〜〜」
妙に間延びした声で二人に挨拶をするとやはり痛むのだろう。脇腹を擦りながら首をかしげる。
「アスカ、ハウス!!」
幸人が一言そう言うとこくりと頷いて部屋に戻っていく。
躾は完璧だ。
「…犬扱いですか?」
「十分だろうが」
あんまり素直に命令に従うので凌駕は否定してやることもフォローしてやることも出来なかった。
酔っ払いを一掃すると凌駕は片付けに追われ始める。
それを横目に幸人は新しいブランデーのボトルを開けて独りで酒を呑み始めた。
「えっ!!嘘!三条さん!?」
「何が”嘘”だ?」
「ずるいですよ〜〜」
がちゃがちゃと慌てて皿を洗い終えると普段は使わない食器乾燥機の中に皿やグラスを納めていく。
「どうした?皿洗いは食器を拭くまでが楽しいのではなかったのか?」
笑う幸人に凌駕は更に慌てる。
「今日は特別です!!」
「そうか?」
くつくつと笑う幸人に凌駕が深い溜息をつく。
気付いてしまったから。
外に呑みに行っていた幸人が実は酔っ払っていることに。
たちの悪い酔っ払いは今まで散々見てきた。
だが凌駕は彼ほどたちの悪い酔っ払いを見たことがない。
先日そのことを本人に話したら「酔って意識のない状態のことなど責任持てるか!」と逆に責められたのだ。
実際苦情を言ったのではなく少し嗜めただけなのだがそれから数週間一度も一緒にお酒を呑んでくれなかった。
そしてそれは今日まで続いていたのだ。
今ここで幸人が酒を呑み始めたということはついに解禁な訳で。
長かったと独りごちながら幸人の横に氷の入ったグラスを持って座る。
「一緒に、いいですよね?」
「勝手にしろ」
そう冷たく言い張っても軽く腰を浮かせて場所を譲ってくれるしブランデーを注いでくれる。
ハイ、酔っ払い確定。
そう。この人酔っているときだけ凌駕に優しいのです。
苦笑しつつブランデーを注がれたグラスに口をつける。
幸人秘蔵のブランデーは口当たりが柔らかくて甘い。
この上なく呑みやすくて後に残らないが少量でかなり眼が回る。
たちの悪さは持ち主そっくりだ。
程よく酔いの回った幸人はふわふわ笑う。
普段絶対に見せない顔。
本当、この世で一番たちの悪い酔っ払い。
あんまり無邪気に笑うから手も出せやしない。
アルコールで紅く色付いた唇がキスを強請るように濡れているのに、だ。
「三条さん」
思い切って肩を抱けば少し驚いてニヤリと笑う。
「したいのか?」
……ダメだ、理性がぶっ飛ぶ。
意識のない幸人を抱くのは躊躇われて今まで手を出したことなどないのだがこうも無防備だと理性もお散歩に行くというものだ。
「キスぐらいいつでもこい」
そう笑って濡れた唇を舌で舐める。
「あーー!!もう!後で怒んないで下さいよ!」
叫んで両肩をしっかり掴む。
ゆっくりと近づけた唇が触れる寸前。
瞑られていた瞳がゆっくりと開く。
「何をしている」
「三条さん?」
冷たく据わった眼が睨む。
「あ…あの……」
「------------ぷっ!」
「へ?」
いきなり笑い出した幸人に呆然としていればすっと近付いた唇が自分のそれにそっと触れて離れる。
「冗談だ」
それだけ呟いてずるずると倒れ込んでいく。
「さ…三条さん!?」
「うる…さ…い……」
膝枕の体勢で眠られてしまった。
しかも顔を凌駕の腹のほうに向けてくれるものだから身体はかなり厳しい状態だ。
「マジですか?」
呼んでも揺すっても起きてはくれない。
「三条さ〜〜〜〜ん」
今度こそ我慢の限界。
そういう状態なのにあんまり気持ち良さそうに眠ってくれるからやっぱり何も出来なくて。
「眼が覚めたら思いっ切り泣かせて上げますからね!」
そう言ってぐっすり眠る幸人の頭を撫でる。
意識のない相手に手を出さない理性の男なのか、それとも意識のない相手はつまらないのだろうか?
どちらかといえば後者であるが人当たりのいい凌駕しか知らない人間には前者に見えるのだろうか?
さて、貴女の凌駕はどっち?
GaiaProject管理人 櫻城 琳様から4444Hit!キリリクで頂きました!!!
やばいくらい嬉しいです!!!感謝してもしきらないですよう!
「酔っ払った青に手を出そうか出さないか苦悩する赤さん」
をリクさせていただいたのですが、変なリクにもかかわらず、このような素晴らしいものを頂いちゃいました!
私って幸せ者〜vvv可愛い!青かわいい〜!!!
本当にほんとにありがとうございました!
大事にいたします・・・v
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