嗚呼、無情2

 

「幸人さん・・・後ろ・・・・」

「いいから、振り向くな。無視しとけ」

「・・・は〜い」

 

あの後幸人と舞は、床にへばりつきながら何やらぶつぶつ言っていた凌駕を足蹴にして

イグレックのショーをやっているデパートいうのが恐竜やの目と鼻の先だと言うことで

徒歩でそのデパートに向かうことにし、仲良く恐竜やを後にした。

舞は大層はりきってお気に入りの可愛らしい赤いワンピースに身を包み、

幸人はいつものスーツやアバレブルーのコスチュームではなく

白いTシャツに軽く濃紺のパーカーを羽織ったラフな格好でしっかり舞の手を掴みながらゆっくりと歩いていく。

時折舞が話しかけるのに背を低くして耳を傾け、僅かに口角をあげ楽しそうな表情をつくる。

車が通りかかれば舞を引き寄せてその腕で抱きしめてみたりして。

「楽しいね〜、幸人さん」

「あぁ・・・」

「でも・・・ごめんなさい、幸人さんにまでご迷惑かけちゃって・・・」

「お前が謝ることなんてない。こんなことになったのも全て・・・あの馬鹿のせい、なんだからな」

「そっかぁ。後ろから怖い顔でついてくるあの物忘れの激しい人のせい、だもんね〜」

二人の後方5メートル。

わざと大きな声で怒気を荒げて発せられる二人の指すその人物、

伯亜凌駕は胃を抑えつつ二人の楽しそうな光景を見つめ大きなため息をついた。

「・・・ひどい。それに舞ちゃんも、三条さんも、俺と出かけるときはあんな可愛い格好してくれないくせに・・・・」

そう小さく発せられた言葉は誰の耳にも届くことなくしがみついたどこかの家の塀に吸い込まれていくだけ。

なんでこんなことに・・・?凌駕はおとした肩を更に頭ごとがくりとおとした。

幸人に足で踏まれ、舞に軽蔑の眼差しを向けられつつも二人につきまとって

結局ここまでついてきたというのに。

当の二人は凌駕の方など見向きもせず、凌駕の存在すら忘れたかのような振るまいでスタスタと道を行く。

凌駕の気分は「針千本を飲む」どころか今や「ハリセンボンを丸呑み」といったところだ・・・と自分で思ってみたが更に空しくなるだけ。

「あう〜・・・胃、胃が痛い・・・・・・・」

そんな凌駕をよそに二人はどんどん先に進んでいき、突然ある店の前で立ち止まった。

どうやらその店に入ろうとしているらしい。

「うっそ・・・・」

凌駕は慌てて二人の入っていった店の前まで駆け寄って、看板を見上げて唖然とした。

『高級フランス料理専門店 フランソワーズ』

二人は凌駕に見せ付けるようにわざと窓際に座り、店員に引いてもらった椅子に向かい合って座る。

「うわ、ほんとに・・・ひどい」

凌駕の恨めしい視線をするりとかわして、幸人はメニューを慣れた手つきで開く。

そのメニューに書かれているのはもちろんフランス語だが、幸人はさらりと目を通すと

舞に確認を取りながら次々と店員に注文していく。

「舞、あとは何が食べたい?」

「う〜ん・・・お肉!」

「じゃあ、この『〜〜〜〜〜〜〜』を」

「すご〜い、今のどこの言葉?」

「フランス語だ。あとは・・・デザートか?好きなのなんでも言え」

「えっと・・・ん〜?どれにしよう?」

「この店で一番高いデザートは?」

「こちらになります」

「・・・じゃあそれを」

「かしこまりました」

微妙に聞こえてくるそんな会話に凌駕が真っ青な顔をする。

その様子を横目でみながら中の二人がにやっと顔を見合わせて微笑んだ。

ややあって来た料理も二人はゆっくりと平らげて、

幸人は舞の口についたソースをフキンで拭いてやったり、舞は幸人の食べ残しを食べてあげたりと

和やかな時間を過ごしたあとにやっと二人は店から出てきた。

その間恨めしそうに窓の外から眺めていた凌駕は、何か声をかけてもらえるかと顔を輝かせたが

二人は手を繋ぎながらタタタ、と凌駕の前を小走りで駆け抜けると二人同時に凌駕のほうを振り返って

また、「べ〜!」と舌を出して笑いながら走り去っていった。

「う゛・・・・・かわ・・・い〜」

二人の余りの可愛らしさに凌駕は鼻を押さえて壁にもたれかかる。

「ある意味・・・あの二人って、最凶・・・・・」

跳ね上がる心臓を何とか抑えて、もう既に豆粒ほどに遠くまで駆けていってしまっている二人をよろよろと追いかける。

その後ろで『高級フランス料理専門店 フランソワーズ』の店員が何か恐ろしいものを見たような顔でそれを見送りながら呟いた。

「何であの人、あんなよろよろして鼻血出してるのに進むのがあんなに早いんだろ・・・・・・・・?怖・・・・・」と。

 

その後ようやく凌駕が二人を発見したときには、二人はもうデパートの中に入ろうとしていた。

凌駕は急いで後を追う、が凌駕がデパートに入ったときにはもう二人の姿は忽然と消えている。

「・・・・あれ?・・・・・・まさか」

見失った〜?!と叫ぶ凌駕の声が一階食料品売り場に大きく響いた。

 

「凌ちゃん、ちょっと可哀想だったかな?」

「フン、自業自得だろう・・・それより、イグレック何階だ?」

「ん〜と、6階だったと思う・・・・」

「よし、急ぐぞ」

「あ、でもね・・・確か3時からだよ?」

「・・・まだ2時過ぎじゃないか。仕方ない、どこかで買い物するか」

「うん!」

「確か、服と帽子とか言ってたな?」

「そうだよ〜、えっと・・・お洋服売り場は・・・・・4階みたい」

という訳で、二人はまず2階ファッション売り場へと向かった。

賑わう店内をざっと見渡して、子供服売り場に足を運ぶ。

「舞、これとか・・・・どうだ?」

「うん!かわいいね〜vねぇ幸人さん、これ似合うかなぁ?」

「・・・似合う」

「これは?」

「・・・いいんじゃないか」

「じゃあ・・・・」

「面倒くさい、全部買え」

「えっ!ほんと?やったぁ〜♪」

「ほら、これも持っていけ。・・・これも、それとか・・・あ、あれも似合うんじゃないか」

「ゆ、幸人さん・・・もういっぱいだし、もういいよぉ?ね、レジ行こう?」

「・・・あぁ」

どこか不服そうな顔の幸人と共に、舞は大荷物ともいえる服と帽子の山を幸人とおおよそ半分に分けてレジまで持っていった。

余りの大さの洋服に店員も慌てて、会計まで10分ほどかかってやっと値段がでる。

さっさと支払いを済ませて大荷物をまた抱えなおす幸人に、

舞がわずかに青くなって声をかけた。

「幸人さん・・・今ものすごい金額が出たような・・・・・・・」

「気にするな」

でもゼロが6つはあったのに・・・・・と舞は思ったが

見上げた幸人の顔が何だか嬉しそうだったので何も言わずに幸人の手を握った。

それに握り返す幸人の手はあったかくて、少しだけ凌駕に似ていた。

 

その頃、その凌駕はというと・・・

「どうしよう・・・本当に見つけられない・・・・・・・・・」

1階から屋上までくまなく探したはずなのに何故か二人の姿を一度も見つけられない。

凌駕は心から自分の不運を呪った。

ごめんなさい、三条さん・・・。

ごめんね、舞ちゃん・・・。

そう伝えたいだけなのに、どうしてこんなに道は遠いのだろう?

凌駕ががっくりと肩を落として、それでも前に進もうと前を見据えたそのときだった。

「え???何でコレがこんなところに・・・?」

凌駕は目を疑ったがそれは確かに見覚えのあるものだった。

一瞬戸惑った凌駕だが、ふとあることを思いついてその場でガッツポーズした。

「これなら、二人に近づけるぞ・・・・」

そう、呟いて。

 

→続く

 

 

 

 

<コメント>

短くするはずが何故かすごく長かったので

約半分にきってみた。

なんか螺愚さまの折角の小説の雰囲気を台無しにしてしまって申し訳ない・・・・・。

しかもBBSに螺愚さまが書いていたネタを存分につかってみました。

勝手にごめんなさい・・・。

とにかく続きを早くUPしよう・・・がんばるぞ!

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