愛唄

 

〜『ラヴ・レター』を破り捨てた男の話〜

 

 

 

 

 

 

 

「ない」

ガタガタ、ゴトン・・・・

宝児は柄にも無く焦りながら

綺麗に整頓されていた自分の部屋を尚も漁り続けた。

大事なものだ。

一体、いつから無い?

1ヶ月前?

一昨日まではあったはずだ・・・

そんなことを焦る頭で必死に考えていた、そんな時。

 

 

「探し物は、これ?」

 

 

低い、ほんとに低い声に続いて

闇の中でぽっかりと浮かぶように

ぬっ、と手が見えた。

その手が持っているものは、紛れも無く宝児の探しているもので。

その手の持ち主だって、宝児の良く知る人物だった。

「セン・・」

ああ、見つかった、よかった。

嬉しさに顔を緩めてそう呟いた宝児の目の前で

センは、にこりと薄く笑った。

「?」

疑問を浮かべながらも、

ありがとう、そう言おうと口を開いた宝児の

すぐ、目の前で。

 

ビリ

 

その紙が、センの手によって

破られた。

「・・・・え?」

何が起こったかわからない宝児の

その目に映るのは次々と破られていくその紙。

「や、やめ・・・・・・・」

徐々に、徐々に小さくなっていく紙くずを

センはひとつ、またひとつと

ひらり

床に落としながら

まだ手の中にあるその紙を

本当に小さな紙になるまで破り続けた。

「あ・・・・・」

思わず口から漏れた無意識の自分の声で我に返り、

宝児は勢いよくセンに向かって駆けた。

そうして、その胸倉を掴み上げて

壁に思いっきり叩き付ける。

ドスン、と鈍い音がしても、宝児はぎりりとその胸倉を掴む手を緩めることはない。

「どうして!」

叫びが、暗闇に響く。

「どうして!!

どうしてこんなことを!!!

あれは、ヴィーノからのたった1つの・・・たった1つだけの手紙だったんだぞ!」

「・・・・・・・・・・・・・・知ってる」

「なら、何故!

何故こんなことをするんだ・・・。

お前に、そんな権利なんて・・・・・・・・・ないのに!!!」

その言葉に、センは宝児を睨みつけていた視線を初めて床に落とした。

それでも宝児は容赦なくその首元を更にきつく締め上げた。

 

 

「・・・・・お前が、俺たちの何を知ってるって言うんだ・・・・・・・・・・・・・!」

 

 

叫びすぎて枯れた宝児の声に、センはうっすらと目を閉じる。

――――――知ってる。

俺は、知ってるよ宝児。

きっと君よりも、いろんなことがわかる。

君が、その手紙を抱きしめて声を殺して毎夜泣くことも。

そしてブレスを見詰めては、涙を何粒も浮かべることも。

でも、悔しいじゃないか宝児。

そんな君を、抱きしめることのできないこの体が

凄く、情けないよ。

だって、君が欲しいのは・・・彼のぬくもりなんだから。

嘘っぱちな、俺の体なんて君にはいらなくて。

 

 

彼が、そう・・・最後に残したビリーザ星の言葉を

君はいつだって調べて意味を理解することができた。

けれど、それをしなかったのは

きっと手紙に書いてある通りに

彼が宝児に会いに来て、きっと直接伝えるからだと

それを信じて、待っているんだよね。

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・・今でも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何で?

もう居ないんだよ。

あいつは、死んだ。

宝児が、殺したんじゃないか。

なのに・・なんで。

 

 

 

「宝児、ヴィーノはもう・・・死んだんだよ・・・・・・・」

 

 

 

思わずそう呟いた声に、宝児は泣きそうな顔で思いっきりセンの顔を殴った。

センはその勢いで床に倒れこんだ。

そして殴られた口元に手を当てて、鋭い眼光で宝児を睨みつける。

 

「宝児、いい加減・・・俺を見てよ」

 

そう、呟く。

苦しそうに、重く、そう言った。

 

「俺は、ヴィーノじゃなくて・・・・江成仙一なんだよ・・・・?」

 

その言葉に、宝児ははっと目を見開いた。

そうして見ることになったセンの顔は

余りにも、余りにも苦しそうで。

何と言ったらいいのかわからず、

宝児は息を呑むだけだった。

 

あんなもの、無いほうがいい

 

そうセンは言った。

 

 

 

宝児を縛る鎖は、もう無いはずなのに。

どうして、囚われるの。

どうして、俺を見てくれないの。

どうして、どうして。

 

 

 

 

こんなに好きなのに

こんなにこんなに好きなのに

 

 

 

好きで、仕方ないのに

 

 

 

「あ、ああ・・・っ・・・・・・・・!!!!!!!」

 

叫びとも、咆哮とも言える声が、宝児の喉から大きく弾けた。

そのまま、宝児は床に手をついて大きく喘いだ。

何のための叫びだ。

何に対しての、鎮魂歌なのか。

 

崩れ落ちる宝児を見ながら、センは小さく呟く。

彼が残したあの言葉を。

宝児が、ずっと彼から言われるのを待っていたその言葉を。

彼の代わりに、俺が、飽きるほど言ってあげるから。

ねぇ、もう泣かないで?

 

 

センは目を閉じて、窓から見える月を見詰めながら、呟く。

 

 

 

 

 

愛してる

 

 

 

愛してるんだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――宝児

 

 

 

 

俺じゃあ、駄目なの?

 

 

 

 

 

 

 

そんな二人を

ただ、ただ静かに

月明かりだけが照らし続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

???わけわかんなーい・・・。

ああ、ああーどうなってんだこれ

ダークシリアスを目指したんだけど。

もう駄目・・。

 

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