ばかっぷるの日常:2

 

 

「うわぁ〜ん」

 

文字通りの泣き声をあげて

勢いよくスナックびばのんに駆け込んできたのは、やはりススム。

あんまりな様子に、既にびばのんに居たムトウが驚いてススムに駆け寄る。

同じくびばのんにはヨシノも居たが、

こんなときはろくなことがないんだよね、

そうわかってるから敢えて遠巻きにその光景を眺めていた。

しかしそんなこと同じようにわかっているはずのムトウだが、

どうしても愛しのススムを放ってはおけなくて

つい

「どうした、ススム」

と尋ねてしまった。

すると、ススムは大粒の涙を零しながら、ムトウを見上げる、

その可愛らしいうるうるした瞳に、正直ノックアウトされながら

ムトウは顔を赤くしつつもう一度尋ねた。

「どうした、何があった?

カトウのやつが浮気でもしたか?それだったら俺のトコに・・」

 

今日婚姻届を出したら何故か受け取ってもらえなかったんだー!!!!!!

 

だから当たり前だーー―――!!!!!!

 

 

ぜい、ぜい、と肩で息をしてムトウが言ったのに、

ススムはキョトン、とした顔で

「なんで?」

そう、聞いた。

「・・・・・・・ススム?」

「なあに?」

「君、オトコノコだよね」

「うん、そーだけど」

「カトウくんもオトコノコでしょ?」

「うん、そうだよ。ちゃんと見たもん」

「み、見たんだ」

「見たよ?」

「何を・・」

「うーんと、ち・・」

「やっぱ言わなくていい!」

そこではぁ、とムトウは一回ため息をついた。

思いのほかススムの言葉が胸に突き刺さる。

この可愛い可愛いススムを!

好き勝手できるなんて・・・。

「うおおお、うらやましい」

叫びだしたムトウを、

「ムトウさん、話が逸れてますよ」

とヨシノが止める。

やっぱりロクなことにならなかったでしょ?

そう言いたげにムトウを哀れみの目で見詰めながら。

「ああ、そうだそうだ・・・えっと・・・・」

「二人ともオトコノコ、っていうとこですよ」

「あ、・・・そうそう、だからなススム。

二人とも、男なんだから・・・結婚は・・・・・」

「できないの?」

「・・・うっ!」

そこでムトウが黙ってしまったのは、ススムが悲しそうな顔でムトウを見詰めたからだ。

くうーん、という悲しそうな泣き声まで聞こえてきそう。

それに打ち勝てるものはきっとこの世に居ないんではないかとムトウは思った。

そして自分も例外ではなく、しっかりメロメロになって

つい

「できないことも・・・ないかな〜?」

「ムトウさん!」

「だって〜・・・」

「もう、じゃあ俺が言いますよ。仕方ないなぁ」

ムトウにかわってしゃしゃりでたのはヨシノ。

「いいですか、ススムくん」

「ん?なぁに?」

そうにっこりと首を傾げるススムに、

ヨシノは子供に話すような口調で話を続けた。

「・・・あのね」

「うん」

「結婚は・・・・」

「うん」

 

あいつじゃなくて僕としませんか―――!!!!

 

ばばば馬鹿かお前――――――!!!!!!!!!

 

「ちぇ、結構本気だったんだけど」

「馬鹿言うな!何考えて・・」

「・・ヨシノくん」

ムトウの言葉を遮ったのは張本人であるススム。

ススムは、少し悲しそうな顔で

「ごめん、ヨシノくん・・・俺は、カトウくんと結婚するから・・・」

「だからできねぇって!」

「カトウくんと、あと子供を一人生んで幸せな家庭を作るのが夢なんだ!」

「子供っておい!」

「あと白い家に大きな庭・・そして大きい犬を飼って」

「お前は夢見る乙女か!!!」

「俺はキッチンから皆に呼びかけるんだ・・

『皆〜、アップルパイが焼けたわよ〜』って・・・」

「っつーか人の話を聞け!!!」

駄目だこいつ・・・何を言っても無駄かもしれない。

はぁ、とムトウは大きくため息をつく。

と、今までずっとバックでクルクル踊り続けていたのに

それにもかかわらず存在を忘れられていたマスターが

「ムトウくーん、苦労してるじゃなーい」

そう言いながらムトウの横にピタっと着地した。

「こういうのはねぇ、順序良く説明しないと駄目なんだよー」

「は、はぁ」

「いいかよく聞けススム」

「はい、マスター」

「君達が普段やってる○○○は

君の○○○○○をカトウくんが○○て、

そして君の○○の○○にカトウくんの○○○○○が○るワケじゃない?

それって気持ちいいの?どんな感じ?」

何を聞いてるんじゃ――――――!!!!!!!!!!!

「うん!えっとねー・・・」

「お前も答えるな!!!!!」

「っていうか、カトウくんそっちのほうはどうなの?」

「上手いよ〜」

「答えるなってば!!!」

えへへ、と可愛く微笑むススムに、

マスターもえへへと笑って

「うらやましいなぁ、俺と不倫しない?」

「何をさらっととんでもないこと言ってるんだー!」

「プリン?俺大好き!」

「そうか!好きなのか〜」

「うん、大好きだよ〜」

「大好きなのか!

それはよかった、じゃあ早速しようか?」

「うん、なんだかわかんないけどいいよ〜」

「そこ、かみ合ってない、かみ合ってないから」

なんなんだろう、なんで俺はこいつらに関わってしまったんだろう。

ムトウが過去を後悔し始めた丁度そのとき、

更にムトウを後悔させる人物がそこに現れた。

 

「ススム〜?新婚早々、浮気かい?」

 

「カトウくん!」

 

ススムはまるで犬みたいに

(きっと犬だったら尻尾と耳をめいいっぱい振ってるだろう)

椅子から立ち上がってカトウくんに抱きついた。

「カトウくん、新婚って・・・」

「ススムが泣きながらあの場を去ってから?

俺はススムを泣かせた奴が許せなくて〜・・・」

「カトウくん・・!」

「感動すんな!」

「だから、一曲お見舞いした〜ら〜」

「う、歌ったんかい!!!」

「快く?婚姻届を受け取ってくれたんだよ〜」

絶対嘘だ――――――――――――!!!!!!!

いつものポーズ(鼻からびよーんのやつ)をするカトウに、

激しく突っ込みを入れたがカトウは全く動じない。

それどころか

「ススム、今日から君は俺の〜・・・・お嫁さんさ!」

「・・・っ!お嫁さん?!」

「そうだよススム・・・そして俺は〜・・」

「俺の・・お婿さん?」

「そうだよ、あ・な・たってよんでごらん〜?」

「やーん・・・あ・な・た・・言っちゃった!」

「可愛いよススム・・・俺の・・お嫁さん」

「あ・な・た・・・・」

なんて会話を繰り広げる二人に、

とうとう突っ込む気力も失せたのかムトウはがくりとその場に崩れた。

どうしよう、これ。

地球的にどうなのこれ。

っていうか本当に婚姻届出しちゃったの?

多分市役所の方でも大変迷惑なのと

カトウくんが白目で歌う姿が怖いから(多分こっちの理由が大きいだろう)

仕方なく受け取ったのかもしれない。

「ムトウく〜ん、どうするのこれ〜」

珍しく呆れ顔でそう言ったマスターに、

ムトウは青い顔をして

 

「触らぬバカップルにたたりなし、ですよ」

 

うまい。・・・・か?

と一人呟いてから、は〜ぁ・・・と大きくため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

結婚しちゃった・・・

あーあ・・・

熱いご要望?にお答えして第二段・・・!

期待に添えなくてすいません。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送