「お!今日のご飯はハンバーグだ!やったね舞ちゃん♪」

「うんっ!おいしいねv」

テーブルに並べられた豪華な夕ごはんに、凌駕と舞が顔を見合わせて微笑んだ。

「りょうちゃん、食べさせてあげるvあ〜ん、して?」

「いいの?!じゃ、あ〜ん」

舞の差し出したハンバーグのかけらは、凌駕の口の端に当たってポトリと落ちた。

「あ〜あ、もったいない。舞ちゃんへただなぁ〜」

「ごめんねりょうちゃん・・・でもりょうちゃん口にソースついてるよ〜?

あはは、りょうちゃんも食べるのへただなぁ〜」

親子のそんな掛け合いに、他の皆も声を出して笑う。

ただし、幸人を除いては。

―――― ふん、見え見えだ。馬鹿が。

先ほどまでの戦いで、凌駕は深く傷つけられていた。

舞を守れなかったことで責任を感じて、

信じていた人間に裏切られて

仲間も奪われた。

それでも凌駕は「人間を信じる」と言った。

その表情はまるで凌駕じゃない別の人物のように、

険しく、悲しみに満ちていた。

それなのに凌駕はその後の夕食の今、もうすっかり笑顔を見せている。

あんなに傷ついても何事もなかったかのように。

強い男だ、と幸人は思う。

それと同時に馬鹿な奴だと。

頼りたいのだろうに。

慰めて欲しいだろうに。

それを懸命に笑顔で隠す。

笑顔の仮面で。

ほんとうに、馬鹿だ。

幸人が正面の凌駕をきつく睨めばにこりと笑顔を返してくる。

その笑顔が、今はとても辛い。

無理をするな。

泣いていいんだ。

頼っていいんだ。

俺が・・・いるじゃないか。

心の中で呟く言葉は凌駕に全く聞こえていない。

・・・悔しい。

「三条さん?全然食べてないじゃないですか・・・。

どうしたんです?何かあったんですか?」

不思議そうにたずねてくる凌駕にいっそ怒りさえ覚えてくる。

仕方ない、俺がこいつの仮面を・・・剥がしてやる。

「いや、何でもない。それより凌駕、そこの醤油を取ってくれ」

「へ?あ、はい。これですね?」

俺はそれを黙って受け取ると、醤油を皿の上のもの(ハンバーグとサラダしかなかったので、サラダに)かけた。

「へぇ〜不思議な食べ方するんですね、三条さん」

俺だってこんなことして食べるのは初めてだ。

・・・まずそう。

そんなことを思いつつ、醤油を凌駕に返す

・・・フリをした。

間抜けな顔で手を出す凌駕に、これまた手が滑ったフリをして

わざと凌駕の膝の上に醤油を落とす。

「あ!」

「すまんな、凌駕。手が滑った」

見事に凌駕の膝の上には琥珀色の液体が染みて広がっている。

「凌駕、反省してる証拠に洗ってやる。ついて来い」

そう言って立ち上がり、凌駕の側に行って後ろから肩をポンと叩く。

苦笑いしながら凌駕がゆっくりと振り向いた。

「いいですって、幸人さん。気にしないで下さい」

いつもの凌駕なら素直について来る所だろうが、今日はやっぱり拒否する。

フン、俺のたくらみを一丁前に気づいてやがる。

だが、ここで引き下がるわけにはいかない。

俺は逃がさないとばかりに凌駕の肩に置いた手に、ぐっと力を込めた。

「何だ、人の親切は素直に聞くもんだぞ。

この俺が洗ってやるといってるんだ。素直について来い」

「いやぁ、明日まとめて洗っちゃうからいいですよ。気にしないで下さい」

「・・・明日になれば染みになるぞ。

それとも何か、お前その仮面を剥がされるのが嫌なのか」

他の奴らは気づいてないだろうが、勘の良いこいつならわかるだろう

にやりと意地の悪い笑みをすれば、案の定凌駕の表情が一瞬だけ変わる。

その言葉に諦めた様子で立ち上がる凌駕を先に行かせ、

舞に一言「悪いな、少し借りる」と断っておく。

そして俺の部屋に凌駕を強引に引っ張りこんで、鍵をかけた。

心配した誰かが来るとも限らない。

これで、二人きり。

「三条さん、一体どういうつもりなんですか・・・」

質問とは取れないような呟きを、凌駕は投げかけてくる。

うつむいて、こちらを見ようともしない。

そんな姿が、何となく痛々しい。

わかってる、お前が誰にも弱みを見せたくないこと。

一人で背負って俺たちに心配をかけまいとしている事だって。

だけどそんなお前を見ている俺の気持ちを考えたことはあるのか。

そんなお前を見て、辛いのは俺も一緒だ。

どうせなら、一緒に悩めばいいじゃないか。

俺はお前の、恋人・・・なんだから。

でもそんな気持ちは悔しいから言わない。

俺に出来ることは、お前をその仮面から・・・・・解放してやる事。

俺は凌駕の座っているところまで行き、精一杯強い力で凌駕を押し倒した。

「わっ!さんじょ・・・!!!」

「幸人、でいい」

俺は凌駕に馬乗りになると、まだ何が何だかわからない様子の凌駕に顔を近づけた。

俺の人生の中で始めての経験だ。

まさか男相手にこんなことする日が来るとは・・・。

くちゅ、と音をたてて凌駕の口の中に入り込む。

こいつがいつもするように、口内を自由に舌で犯す。

いい気味だ、いつもこいつの良いように扱われてるからたまにはこういうのも良いかもしれない。

「ゆ、・・・きと、さん・・・っ」

あぁ、なんとなく息が苦しくなるまで俺の唇を貪る凌駕の気持ちがわかった気がした。

こうやって支配していると、優越感を感じる。

こいつは俺のものだと、強く思う。

ようやく唇を離すと、凌駕は苦しそうに息をしている。

が、俺の方がもっと苦しい。

こいつみたいに俺はばけものじゃないんだ。

お互いに息が整った頃、俺は今度は凌駕の体の下のほう

つまり凌駕の下半身に顔をずらした。

「幸人さんっ!!!何を!!!」

「うるさい」

俺に出来るだろうか、いや出来る。

心を鬼にして・・・。

 

「いって〜!!!!」

 

部屋中に響き渡る大声で凌駕は叫んだ。

そりゃそうだろう、人間の中でかなり痛みを感じる太ももにあるツボを押したんだから。

それでも俺はそこを押し続けた。

「いたい!!!ぎゃ〜!!!」

凌駕の目から痛みによる生理的な涙が落ちる。

しかしそれはとめどなく、次から次へと零れ落ちる。

もうそれは痛みの所為だけではない。

それは・・・悲しみの涙だ。

「痛いですよ、ゆ・・きとさん・・・」

「・・・やっと仮面が剥がれたな」

その言葉に俺の下で目から涙を流しながらそれでも笑おうとする凌駕。

こいつはとてつもなく・・・悲しすぎる奴だ。

「ほんとに馬鹿だな、痛いのはお前の・・・心だろ」

「・・・幸人さん」

「辛いのなら、無理をするな。泣きたいときは、泣け。

お前は馬鹿なんだから、深く考えるな」

言いたいことの半分も言えないけど。

俺も馬鹿だな、こんなことで泣きそうな顔になってるのがわかる。

「泣いちゃってごめんね、幸人さん」

起き上がって俺の目を見ながらすまなそうな顔をする。

謝るな、誰にだってあることだ。

お前は自分を見くびりすぎなんだ。

お前だって皆と同じ、人間だ。

悲しくもなるし、辛いんだ。

「馬鹿・・・!俺がいるだろ!何で頼らない?

お前が辛いときは俺だって・・・辛いんだ!」

最後はちょっと声が裏返ってかっこ悪かったから、

俺は恥ずかしさと切なさで凌駕を抱きしめた。

悔しいことに、俺が立ち膝で抱きしめると

座り込んでいる凌駕の顔がちょうど俺の胸の位置にある。

「幸人さん・・・泣いて、いいですか・・・・・・」

「聞くな、馬鹿・・・」

「・・・何か今日幸人さんに馬鹿って言われてばっかですね・・・へへ・・・」

「それはお前が・・・・・ほんとに馬鹿だからだ・・・・・・」

「ひど・・・ゆき、とさん・・・・・っ・・・・・・」

小さな嗚咽が静かに響いて、

出来るだけ優しく、出来るだけ愛を込めてその凌駕の背中を撫でた。

いつもは大きな背中が今日は頼りなくて、小さい。

「もう無理をするな」

「・・・うん」

「辛いときは辛いって言え」

「・・・頑張る」

「泣きたいときは俺の所にこればいい」

「・・・・・それはちょっと」

「じゃ、俺を抱けばいい。何もかも忘れる位・・・」

「何もかも忘れる位?」

「夢中にさせてやる」

「・・・それは・・・・・楽しみです・・・・・・」

その頭に顔をうずめて、

「馬鹿・・・・・」

俺はもう一度、そう呟いた。

 

 

後日・・・

「三条さ〜ん!!!みて下さい!!!火傷して泣くくらい痛いんですう〜!!!」

「だからなんだ!!!」

「抱かせてくださいv」

「は?」

「何もかも忘れる位、でしょ?」

「〜っ!!!!!!お前は〜!!!!」

「冗談ですよ!!!ぎゃ〜!手の中のナイフ置いてください!!!!」

まさかこう来るとは・・・・・。

俺は持っていた果物ナイフを恐竜や自慢の和包丁にさりげなく握り替えた。

 

・・・ま、いいか。

お前が笑っているんなら。

お前の笑顔が本物なら。

 

永遠にこの俺があんな厄介な仮面は預かっててやるから。

お前はただ・・・馬鹿みたいに、

――――――  ずっと笑ってろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<コメント>

え〜・・・・・・・

赤青だよね?!

わかってます。

青赤っぽいことは。

でもこれは絶対に赤青なの!!!!!!

たまには幸人が凌駕を強く思ってるのが書きたくて。

どうでしょう???

ダメなのかな、赤青界では。

意見、お待ちしてますvvv

ずうずうしいので・・・(逃)

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