彼の、その英語は

 

 

 

 

「最高だよ、ベイベー!」

 

まーたなんか言ってるよこの人。

俺は目の前のジャスミンと目を合わせて同時に苦笑した。

「マーベラス!なんて、いい子なんだ」

あれ、ちゃんと意味わかってんの?

いやでもホージーはあれでもエリートなんだから。

そう言った俺に、またジャスミンは噴き出している。

ホージーの日本語英語は今に始まったことじゃないし。

しかももう慣れてるというか

もう俺は可愛いとか思ってしまう域に(病気かも)いってるし別にいいんだけど。

今日のホージーの日本語英語のお披露目役はマーフィー・・

っていうのが可笑しくてつい耳を傾けていただけで。

「マーフィー、お手」

「きゅうん・・」

「よし、プワァーフェクト!俺の教え方がいいのかな」

「ワン!」

「そうかそうか、エクセレンツ!」

ホージーが教えたとおりにお手、おかわり、伏せ・・などを完璧にこなすマーフィーに

教えた本人であるホージーの日本語英語は更に冴えてきていた。

そんな中、どこかに行っていたウメコがデカルームに帰ってきて、

突然ホージーの元へと駆けていく、そして。

「ねぇ、ホージーさん、見て見て!これオニューなのよ〜可愛い?」

『オニュー』なんて言葉久々に聞いたけど、ウメコ。

新品らしいピンを嬉しそうに見せながらそう言うウメコに、

ホージーは、う〜んと唸ってから

「・・・・・あぁ、似合ってる。キュートだぜ」

なんて、かっこつけて言っちゃってる。

その言葉に、ジャスミンは腹を抱えて笑い出した。

なんかマーフィーと同じ扱いよね・・ふふ・・・あはは!

ちょっと大丈夫ですかージャスミンさーん・・・。

なんて言いながら、俺も実は面白い。

次はどんな日本語英語が聞けるのか。

と、ちょうどそこへ都合よくやってきたのはバン。

さすが、タイミングをわかってらっしゃいます。

「なー相棒、報告書がうまく〜・・」

「シャーラップ!お前、また人にたかるか!

お前よりマーフィーのほうが利口なんじゃないのか?イッツフール!」

「ひっでー相棒、なんだよ〜俺より、マーフィーの方がいいのかよ!」

「ふん、ザッツライッ!っていうか相棒って言うな」

「うう・・もういいもーんだ!ボスに頼むもん!」

うわぁ〜ん、と駆けてデカルームを出ていったバンを横目で見つつ、

哀れな・・とライバルながらもそう思った。

そんな俺の目の前の人はもうなんかツボに入ったらしく笑いが止まってませんけど。

「ジャスミン〜生きてる〜?」

「あはは、なんとか!だって・・ホージー・・ぷ、はははは」

「・・文章になってませんけど」

「だって!ザッツライ・・・・あはははは!もう、やだぁ、あはは」

大笑いしてるジャスミンを、俺は少し面白いからと見物していたけど。

運悪くエリート様の目に止まってしまったらしい。

「おい、そこ!おしゃべりはストップ!」

ぷはははは、とまた笑い出してしまったジャスミンを、

ホージーは不思議そうな顔で見詰めている。

そんなホージーを見て、更にジャスミンは笑い出す。

ああ、これじゃあ悪循環。

だけどようやくそんなおかしいジャスミンに気付いて、

ウメコがジャスミンを引き取りに来た。

「なによう、どうしたのジャスミン。ちょっと外に出て空気吸って来たらいいんじゃない?」

「そうね、ははは。そうするわ・・・あはは」

「ねぇセンさん、おかしくなっちゃったの?ジャスミン」

「・・・俺に聞かれてもなぁ」

真面目に心配するウメコは、ジャスミンに付き添ってあげるわ、と言って一緒にデカルームから出て行く。

そんなウメコの後を、マーフィーはじゃれながら付いていって。

デカルームには、俺と、ホージー。

ありゃあ、これは予想もしない展開だ。

「なんだあれ・・・」

「さぁ、俺に聞かないで?」

不思議顔のホージーは、俺にとっては可愛いけど。

あの口が、発するのならやっぱりなんでも可愛く聞こえてしまうから、

きっと日本語英語も可愛く聞こえるんだなぁ〜。

なんてそう思ったりしていると。

「ああ、ベイベー・・しっかりしてくれよ」

なんか突然独り言を言い始めたホージーを驚いて見てみれば

今度はプリンターに話しかけてるみたいだ。

どうやら紙が詰まって印刷がストップしてしまったらしい。

悪戦苦闘するホージーの後姿を見ながら、俺はなんとも言えない気持ちになる。

あの口でだよ?

あの可愛い口で、ベイベー、とか言われちゃうんだよ、プリンターごときが。

さっきマーフィーも言われてたけど。

俺は言われたこと無いのに。

きっと俺以外なんとも思わないことなのに、

ホージー大好き人間な俺はなんか悔しくて。

いいよねぇ、ホージーにベイベーだよ?

なんかうらやましくない?

しかもウメコなんかキュートとか言われちゃって。

バンが言われてたフール、とかはうらやましくないけど。

もしアイラブユー、とかだったら、いやそれはちょっと望みすぎか。

せめてベイベー、とかキュート、とかあのカッコいくて可愛いホージーに言われてみな?

きっと瞬殺。天にも昇れちゃいます。

『愛してるぜ、ベイベー』

『センちゃん・・・お前はいつもキュートだな、マーベラス!』

とか言って欲しい、とか思っちゃう俺って結構重症かな?

いやそうだよね、わかってます。自覚はあるんですけど。

ほら、俺ホージー大好き病だから。

ホージーにされるんならどんなことでもしたいわけだ。

言ってもらえるんなら、言って欲しいじゃん。

だから、可愛くお願いモードで、ちょっとホージーにお願いしてみた。

「ねぇホージー・・・・俺」

「何だよ、今忙しい。くそ、スワンさんのとこ行って来なきゃ」

「・・何、プリンター直らないの?」

「そうなんだよ・・じゃ、俺行って来る」

「え、ちょ、ちょっと待ってホージー」

デカルームから出て行こうとするホージーを、俺は大慌てで呼び止める。

焦った俺の声に、ホージーは少し驚いたようにしながら、ちゃんと振り返ってくれた。

急いでいるとか言うわりに、俺にはこういう風にしてくれちゃうんだもんなー。

ああ、ごめん大したことじゃあないんだけど〜・・、と少し罪悪感。

仕方ないから、駄目もとで素直に白状してみる。

「・・あのねぇ、俺にも言って欲しいんだ」

「・・何を?」

「英語」

「は・・・?」

「君の、英語で・・俺にさぁ、言って欲しい」

「何言ってるんだ、お前」

「ほら、言ってるじゃん・・ベイベーとか、なんとか・・」

「それを言って欲しい?俺に?」

「・・・・・・・うーん」

「もしかして・・ヤキモチか?」

「え、嘘。そうなのかな」

「そうとしか思えないが」

「いやーそんなつもりはなかったけど、そうとるなら別にいいとして、言ってくれない?

俺をさぁ、英語で表現するなら・・・どんな感じ?」

「・・・・馬鹿か!」

「・・えー言ってよ〜」

「もう、俺・・行くからな、お前なんか、知るか!」

ずかずかと、音を立てるように歩いていくホージーを見て

ああ、怒らせてしまったかなぁ・・

っていうかヤキモチなのかなこの気持ちは。確かに、そうかな?

・・・とかぼんやり考えてたけど。

ふいに、ホージーがじーっとこっちを見てることに気付いた。

な、なんだなんだ・・?

すっごい睨んでるけど。

その怖い剣幕のまま、ホージーは今度は俺に向かって急に歩き出してきた。

うわ、何?怖い、怖いですホージーさんー!

ひっぱたかれるのかなぁ、なんて少し頭をよぎって

あまりの勢いのホージーに思わず目を思いっきり瞑ったら。

首の後ろにホージーの手が回って。

その手をぐい、と前に動かした勢いのままに、顔をぐい、と前に突き出すことになった。

そうして・・・

 

ちゅ、と額で音がした。

 

暖かい感触、だけどすぐに離れていくその暖かさ。

ホージーの唇だって認識してからびっくりしつつ急いで目を一気に開けようとしたら、

目の上に今度はホージーの手が重なった。

何?何で?

見えなくて、でも確かにホージーはそこに居て。

でも何をされるのかわからない。

何・・何するの、ホージー。

そんなパニック状態の頭の中に、耳の傍で聞こえてきたかすかな響き。

 

 

「       」

 

 

 

聞きなれたその声が、耳を通って俺の心にまで染み渡る。

ようやく理解して、

「嘘っ!!!!!!!!!」

って思わず叫んだ頃には目の前にもう彼は居なかった。

勢いよく椅子から立ち上がってしまったけど、

それがわかった瞬間力が抜けたようにそのまま椅子に座り込んだ。

そして、ずずーっと机に体を預ける。

嘘、うそだぁ・・・。

そんな可愛いこと、言うわけ無いじゃん、あのホージーが。

ベイベーより、アイラブユーより、効く。

そんな言葉なんかよりも俺をもっと破壊させる、その英語は。

「うそだぁ〜・・・」

もう一度同じ言葉を繰り返して、でもやっぱり現実だと確認する作業を何度もする。

「・・・・・あれ、夢?」

いや違う。

あの唇の温かさは本物。

「また、入れ替わったの?」

いや違う。

ホージーの様子はいつもと同じ、俺が監視してるんだから間違いないじゃない。

「・・・妄想?」

いや違う。

だって彼の声は未だに耳の奥でくすぶってるんだもの。

 

だったら、あれは。

あの言葉は。

「・・・・・うそだぁ」

俺は火照る頬を両手で押さえ、

多分きっと凄くみっともない揺るんだ顔で

それはそれは幸せそうな顔で、微笑む。

 

 

心が、ドキドキが収まらない。

頭が、処理できないくらいにごちゃごちゃしてる。

ほんとに?

ほんとに?宝児。

俺が、そうなの?

俺でいいの?

 

この俺を

 

こんなにも、

・・・こんなにも、

 

破壊させる、その聞きなれた宝児の英語は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 my darling 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

・・・・・・・・・・・。沈黙。

あれ・・・おかしいですねぇ?

これ削除し忘れました?ごめんなさい、消します。

と・・いう感じの。

あああ〜ごめんなさい。

発端は私の

「宝児にセン様をダーリン!って言わせてみたい!」

という欲望から生まれたこの作品。

・・ごめんなさい、消し忘れ?(しつこいな)

なんか当初の頭の中で考えてたのは10行。

そして何故かいまじゃあ・・・何行よ?

つかバンが可哀想。

そろそろ救済企画を考えてあげないとバンファンから抗議がきちゃうじゃないか。

最後の言葉は一応、反転です。

すべて選択で・・・(知ってるから!皆!)

ごめん・・反転とかの前に少し見えてるのがもうね、イタイ・・・。

いやお好きなお言葉入れてもかまわないです。

ほら、なんですか、ハニーでもいいんです。

では(唐突に終わる)

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送