「この馬鹿!」

ゴキッ!!!

「いったぁ〜い!・・・アレ?」

「何だ、お前変だぞ・・・?」

「・・・直んない」

「・・・大変だ・・・」

 

それは銀次が馬鹿なことをして蛮が殴る、といういつもの光景だったのだが、

ただひとつ違っていたのは・・・。

 

「カズっちゃん!見て!首が元に戻らなくなっちゃったの!どうしよう!」

蛮と銀次は花月と連絡をとって大きな店が立ち並ぶビル街で待ち合わせた。

さっそく銀次は自分の状況を話す。

大慌てする銀次の首は右を向いたまま正面を向くことが出来ないようだった。

だから今も銀次は体を左に向けてやっと花月に対して正面を向いている状態である。

「あなた・・・銀次さんに何かしたでしょう」

「フン、いつものように殴っただけじゃねぇか。

だいたいなんでこいつを呼ぶんだよ、弦しか使えねぇじゃねぇか。こいつは」

睨む花月をものともせずに原因であるはずの蛮は知らん振りをしている。

「蛮ちゃん、そういうこと言ったらダメでしょ!

カズっちゃんなら十兵衛の居所知ってるかもって来てみたんだ、どうかな?」

「あぁ、もちろん知ってますよ。なんなら今すぐに呼び寄せて・・・」

「え?」

ドカ〜ン!

ものすごい爆音に銀次が振り返ってみるとそこには弦にからまりながら壁に激突している十兵衛の姿があった。

どうやら弦を十兵衛の体に巻きつけて一気にここまで引っ張ったらしい。

人間にそんなことが出来るのか・・・花月ならではのスゴ技だ。

「か、花月・・・こういう呼び寄せ方はやめろといっただろ・・・」

十兵衛はそう言いつつ壁にめり込んでいる自分の体をひっこぬき、

体に巻きついている弦を取って花月に渡す。

「だって・・・これが一番簡単な方法なんですよ」

「そうだろうが・・・やられた身にもなって欲しいものだ・・・。

それで?何の用だ?」

「ごめんね十兵衛、用があるのは俺なんだ。あのね、この・・・」

「首を治して欲しいんだろ?見ればわかる」

「小さいころからカズっちゃんの主治医をしてきた十兵衛なら治せるんじゃないかと思って・・・。治してもらえる?」

「他でもない雷帝の頼みだ。

断るはずなかろう、よし任せておけ」

「十兵衛、俺はもう雷帝じゃないって・・・。でも助かるよ、ありがとうv」

「じゃそこに横になれ」

「うん!」

よろよろとまっすぐ歩けないながらも、銀次はなんとか花月の用意したベッドに言われたとおり横になった。

「よろしくお願いします、センセv」

「先生はないだろう・・・。まぁいい。

少し痛いだろうが我慢しろよ」

「は〜い」

 

何とか治療にこぎつけた銀次に、蛮は胸を撫で下ろした。

実は結構気にしていたのだ、自分の所為で銀次の首がこのままだったらどうしようか、と。

このままじゃ戦闘でも不利だし、いちゃいちゃするにも不便だ。

特に最後の『いちゃいちゃ』の方が蛮にとっては大問題だった。

キスをするにもナニをするにもあんなんじゃカッコがつかない。

抱きしめても顔がそっぽを向いていたら何か変だ。

だから一刻も早く・・・

「あっ・・・ソコは・・・だめェ」

・・・?!

「いや・・・お願い・・・」

 

「てめぇ銀次に何してやがる!!!答えによってはタダじゃ・・・」

 

「何って・・・」

「治療」

「何考えてるんですか、あなたは」

「・・・・・・」

 

三人(うち一人はそんなつもりはないのだが)に馬鹿にされて蛮の面目は丸つぶれだ。

コレもそれもあんな変な声を出す銀次が悪い。

こんなこと早く終わして帰りたい・・・。

そう思っていた時・・・。

「い・・・いった〜い!も、もう・・・いやぁ!」

「銀次ィ!!!」

そこで蛮が見たものはあわれもない姿の銀次だった。

両手を花月に押さえられ、背中に十兵衛を乗せて足をバタバタさせている。

「てめぇら・・・銀次を離しやがれ!」

「ちょ、ちょっと・・・誤解しないで下さいよ、これは・・・」

「言い訳はきかねぇ!二人がかりでよくも・・・!」

「おい美堂!勘違いだ、あんまり暴れるから押さえつけただけのこと。別にやましい気持ちは・・・」

「やかましい!どきやがれ!銀次、早くこっち来い!」

「う・・・うん?わかった」

蛮は急いで銀次を連れて車に乗り込んだ。

銀次は俺が治す!そんな決意を固めながら。

 

そんな訳で今二人は公園にいる。

でも何にも直す方法が思いつかない。

二人車に乗ったままボーっとしているだけだ。

しかも右を向いている銀次は車の助手席に乗れば蛮の方しか向けないので、

蛮の事しか見ることができなかった。

その銀次の視線が自分を責めているようで蛮はどことなく居心地が悪い。

「蛮ちゃん・・・何でこっち向いてくれないの?もしかして、怒ってる?」

先ほどから気まずさから銀次の方を見ない蛮に銀次は不安を感じていた。

このまま首が治らなければ蛮ちゃんは役立たずの俺を捨てるつもりなのかな?
だからこっち向いてくれないの?

蛮ちゃん・・・。

「怒ってなんかねぇよ・・・。どうやって治すか考えてるだけだ」

「蛮ちゃん・・・俺このままだったら・・・」

「治す!俺が必ず治すから・・・。お前は心配すんな。

例え治らなくても俺はお前だけは捨てたりしねぇ。俺がずっと、一生お前を守ってやる」

「蛮ちゃん・・・!」

わずかに顔を赤くしてそう言う蛮に銀次は嬉しくて涙が出そうだった。

「蛮ちゃん、ありがと!俺すごく嬉しい!蛮ちゃん大好きだよ〜!」

「銀次・・・俺も・・・」

そう言おうとして銀次の方を向いた蛮は、ハッとした。

銀次の顔が・・・近い。

形のいい唇が目の前にある。

く・・・・・・食いてぇ・・・・・・・!

「蛮ちゃん・・・?どうしたの?」

よく見れば先ほどの余韻で銀次の目はうるうると潤んでいる。

かっ・・・かわいいじゃねぇか・・・。

不思議そうな顔で自分を見つめる瞳は蛮の何かに火をつけた。

食べていいよな、神様。

これはむしろ食べろと言ってるんだよな、えんま様。

きっと銀次も食べて欲しいよな、仏様。

いただきま〜す!

「銀次・・・こっち向け」

「向いてるじゃん。何言ってるの、蛮ちゃん」

「・・・・・。いいから、目をつぶれ」

「え〜?なんで?」

「首を治すおまじないをしてやるから」

「おまじない?ま、いっか。・・・はい、つぶったよ?それで?」

「いいか?目を開けるなよ?」

「・・・うん」

蛮は目を閉じている銀次の顔に手を添え、ゆっくり顔を近づけていった。

そして、そっと触れるだけのキスをした。

銀次は自分の唇に何かやわらかいものが触れた感触がしたが、それが何かわからなかった。

そして、ようやく悟った。

 

(パンだ!)

 

惜しい!濁点違いの間違いに銀次は気づいてない。

きっと蛮ちゃんが落ち込んでいる自分の為に用意してくれたんだ・・・。

蛮ちゃんってなんて優しいんだ

食べていいんですよね、神様。

これはむしろ食べろと言ってるんだよね、えんま様。

きっとパンも食べて欲しいんですよね、仏様。

いただきま〜す!

 

・・・がぶ。

 

「いってぇ〜!!!!!!」

余りの痛さに蛮は思わず叫んだ。

「てめぇ・・・!何しやがるんだ!!!」

そして思わず銀次を殴った。

ゴキッ!!!

「いったぁ〜い!アレ?」

「何だ、お前変だぞ?」

「今度は・・・」

「・・・・・・・左か・・・・・・」

 

それからしばらく銀次は左を向いたまま生活するハメになった・・・とさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<コメント>

え〜・・・

ヤマなしオチなしイミなし。

ま、そういうことで。(逃)

つーか花月そんな技使えないだろう。

きっと弦で引っ張られてくる途中需宇部絵(←うちのパソコンで変換するとこうなる。誰のことかな?ふふふ)

は大変でしょう。

いろんなトコにぶつかるんでしょうね。

で、血だらけ。

怖ッ!(逃)

 

 

 

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