「こんにちは、銀次さんv」
「よぉ、銀次。元気そうだな」
「あ、カヅっちゃん!士度も!」
その日ホンキートンクはもともといたGBの二人に、花月と士度が加わって満員御礼となった。
が、マスターの波児はこれからなにが起きるのかなんとなく予想が出来て、大きなため息をついた。
早速、士度は並んで座っている蛮と銀次の隣の席に座り、蛮を一瞥してから銀次の顔を見た。
「おい蛇ヤロー、ちゃんと銀次のやつに飯食わせてんのかぁ?
かわいそうに・・・少しやせたんじゃねぇのか?」
銀次の顔に手を添えてそう言う士度に蛮がピクリと反応する。そんな様子に銀次は一生懸命頭を振って否定した。
「や、そんなことないよ!心配しないで、蛮ちゃんはちゃんと余り物のご飯とか沢山持ってきてくれるから・・・」
「なにぃ〜!余り物だ〜?!そんなモン食ってんのか?
銀次、お前さえよければこんな甲斐性なしのクソ蛇は捨てて俺んとこに来ていいんだぞ?
俺なら蛇ヤローと違って毎日お前の好きな寿司いくらでもくわせてやれる。
未練がましくこいつが追いかけてきても俺がお前を必ず守ってやるからよ・・・」
状況を良くするために一生懸命言ったつもりが余計に士度に火をつけてしまったようだ。
どんどん迫ってくる士度に銀次は少し身を引いて頑張ってぎこちなく微笑みながら蛮に助けを求めた。
「し・・・士度、気持ちは嬉しいんだけど俺蛮ちゃんと二人でゲットバッカーズだから・・・ね?」
「聞いたかバカ猿マワシ。銀次は俺様の方がいいんだってよ。
さっきから聞いてりゃどっちが未練がましいんだか、うじうじうじうじと俺様の銀次につきまとわりやがって。
銀次が好きなのはお前じゃなくてこの俺様だ!」
あぁ・・・もう。蛮ちゃんがこのままおとなしくしてるはずなかった・・・。
銀次は少し泣きたくなってきた。
そんな銀次にはおかまいなしで士度は怒りの頂点に達していた。
「なにぃ!誰がお前のだと?!
お前がそうやって嫉妬心むき出しにしてるから銀次は怖くて逃げ出せねぇんじゃねぇか!
いつもいつも銀次のこと縛りやがって。
金もわたさねぇ、一人じゃどこにも行かせねぇじゃ息がつまって銀次だっていいかげんうんざりしてるはずだぜ」
「それはこいつが金やれば落とすし一人じゃ迷って帰ってこられなくなるじゃねぇか!
しかも俺を縛って放さねぇのは銀次の方だ。夜寝るときだって俺の手を握ったまま離さないんだぞコイツは。
寝言で『蛮ちゃん・・・』なんて色っぽく言ってるこいつのどこが、うんざりしてるって言うんだよ!」
「ちょ、ちょっと蛮ちゃん、士度もいいかげんやめてよぉ〜!
あと蛮ちゃん、嘘言わないで!士度本気にしちゃうでしょ」
もう半分シカトしていた二人の喧嘩だが、つい口を出してしまった。
でもそんなこと言うはずがない、銀次にはそんな確信があったのだ。
そんな銀次の様子に蛮は勝ち誇った顔をしながら、銀次の手を握って言った。
「何言ってんだお前、全部ホントだぜ。
こうやって俺の手を握ってな・・『蛮ちゃん大好き』っていつもいつも言ってるぜ?わかんねぇのか?」
「ば、ば、ばっ、蛮ちゃん!やめてよぉ〜///」
わざと低い声で言うと銀次は真っ赤になってはっきりと動揺している。
その様子が可愛くて蛮は銀次の手の甲に軽くキスをした。
「うあ〜!!!な、なにするの、ば、蛮ちゃん!こ、こ、こんなトコで〜!」
「!!!っ、て、手を離せ!何しやがるんだてめえは!銀次だって嫌がってるじゃねぇか!」
「嫌がってなんかねぇよな、銀次?」
「嫌がってる!!!だよな銀次?このドスケベが!!!」
「ドスケベ?テメェなんてむっつりスケベだろうが!何考えてるかわかったモンじゃねぇ。
むっつりよりはオープンなほうが潔いじゃねぇか、そう思うだろ?銀次」
「俺はむっつりなんかじゃねぇ!いつも純真な気持ちで銀次に接してるんだ、
お前みたいに一日中銀次に対してやらしいことばっか考えてるような変態とは違うんだよ、だよな銀次?」
「銀次、はっきり言ってやれ、この変態猿に!お前が好きなのはこの俺様だってよ」
「銀次、怖いんだな、そうなんだな・・・よし俺がこいつを倒してお前を救い出してやる」
「いい加減にしてよ・・・」
「なんだと!やれるモンならやって見やがれこの面白猿が!」
「見せてやろうじゃねぇか、百獣擬態・・・」
「いい加減にしてよ!!!二人とも!!!」
ぎ、銀次が切れた。
ピシピシと電気のほとばしる音がする。
丸焦げになる予感に二人は思わずお互いの手を合わせて握り締める。
「これ以上俺と皆を二人の意地の張り合いに巻き込まないでくれる?まだ喧嘩続けるって言うんなら・・・」
ニコともスンともしない冷たい銀次の顔が本気なのを物語っている。
「ぎ、銀次。悪かった、もうしないから、な?」
「そ、そうそう、ほら、俺ら仲良しだから、機嫌直せよ〜?」
「銀次さん、こんな奴らはほっといて僕とケーキでもたべにいきましょ?ね?」
突然の会話への乱入者に一同の視線は声の主に注目する。
「あ 糸巻き・・・やたらおとなしいと思ったらそういう魂胆か!」
「花月、もちろん俺も誘ってくれるよな?こんな馬鹿はほっといて3人で行くとするか」
「ナンだと!行くのは俺と銀次の二人だ!だから金寄こせ」
「あぁ?」
「ヤンのかこらぁ?!」
ピシ・・・
バリバリバリ!!!
『ギャアア!!!』
「カズっちゃん、二人で行こうね。この二人はいけないみたいだし」
「お二人さん、お大事に。あ、ちなみにこういうのを漁夫の利と言うんですよ。
ひとつお勉強になりましたねvじゃ、銀次さん、行きましょう」
「あのやろ・・・」
「ぎんじぃ〜・・・」
約100Vの電撃をくらった黒焦げの二人は波児によって店の隅に追いやられてそのまま息絶えた・・・そうだ。
今日の勝者…花月
<コメント>
一回やってみたかった銀次争奪戦。
シリーズにしたいな〜。会話ばかりですいません・・・。
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