非日常的な、朝の風景

 

 

 

 

 

 

「わ〜!!!!!!!!!」

 

朝10時。

仙一の部屋に、突然大きな悲鳴が響き渡った。

その声の主は、仙一の部屋に泊まりに来ていた宝児。

恋人同士とくれば、いつだって一緒に居たいと思うもの。

その例に漏れず、宝児と仙一も仕事が終わったあと位はと、毎晩のように同じベッドで寝るのを常としていた。

しかし昨晩はただ寝るだけじゃ済まなくて、ついイタシてしまったけれど。

「・・・・・・・ん・・?何・・ほうじ・・・?」

あまりの大きな声に、隣でぐっすり寝ていた仙一もわずかに目を覚ます。

けれどあまりの睡魔に勝てず、仙一はまた寝ようと瞼を閉じかける。

するとその声に気づいた宝児が仙一の上に圧し掛かって寝るな、と叫んだ。

重さに目を開けばそこには上半身裸の(もちろん下も穿いてないけれど)宝児。

仙一は思わず一気に覚醒し、その光景に目を細めた。

「いい眺め・・・」

うっとりとした声に宝児は顔を赤らめるが、今はそれどころではない。

「セン、大変だ!」

「ん・・・?何?もう一回シたいの?」

「何馬鹿なこと言ってるんだ!それより・・」

「も〜宝児ったら朝っぱらから大胆だなぁ・・・。人の上にそんな恰好でのっかかって・・」

「!!!」

宝児は言われてやっと自分の恰好に気づく。

そしてあまりの恥ずかしさに顔を赤らめた。

そんな宝児を下から可愛いなぁと思いつつ見つめながら、仙一は不敵に微笑む。

「よぉし、宝児にそこまでされちゃ、張り切るしかないか!」

「何考えて・・・わぁっ」

自分の上に乗っていた宝児を、仙一は難なく逆に押し倒し自分の下に組み伏せた。

両手を纏めてベッドに縫い付けてにっこりと笑った。

「朝ってのもいいねぇ、宝児の顔がちゃんと見えるし」

「ちょ、ちょっとセン!俺は・・」

「宝児、往生際が悪いんじゃない?」

そう言って仙一は宝児の首に顔を埋めた。

昨晩つけたキスマークを確かめるかのように、またそこに吸い付いて更に跡を残していく。

「んんっ!馬鹿、やめろ・・!」

「やめていいの?」

「やめていいんだ!」

「わ、ひどいなぁ・・・じゃあこれならどう?」

「そ、そんなとこ触るな・・!」

「なんか今日の宝児は諦めが悪いねぇ、じゃあここは?」

「・・・っ!いい加減に・・・」

『しろ!』と宝児が言うのと同時に、仙一の腹付近に宝児の膝蹴りが炸裂した。

少しは手加減したようだが、それでも結構な痛さに仙一は顔をしかめる。

「いった〜・・・・」

「駄目だって言ってるのにするからだ!」

「もう、何だって言うのさ・・・」

「・・・?」

「忘れてるんじゃないだろ〜ね、何かあったんでしょ?」

「・・・あ、思い出した!大変だぞ、セン・・遅刻だ!!!」

「え?」

「ほら、時計見てみろ!もう10時だぞ!!!」

「あ、ほんとだ・・・」

「ほんとだ・・・じゃない!どうするんだ!ボスに怒られるぞ!!!」

「それは嫌だなぁ・・・」

「大体目覚ましをかけたのにどうして・・・」

そう言いかけてふと仙一の表情を伺うと何故かどっかを見て気まずそうな顔をしていた。

不思議に思い宝児はしばし思考を巡らせ、途端はっとあることに気づく。

「お前、目覚まし止めたな・・・?」

「・・・・・」

「・・その沈黙は肯定と受け取ってよさそうだな・・・」

「宝児がね、起きるなって言ったんだよ?」

「・・・俺が?」

「そ、目覚ましがなって俺が起きようとしたらさぁ・・・」

そう言いながら仙一は回想を始めた。

 

 

午前6時。

頭の上で目覚ましがなり、その音で仙一は目を覚ました。

しかしどうやら隣で眠っている宝児はまだ目が覚めていないようだった。

昨日無理させちゃったかなぁ・・・仙一はそうわずかにまだ眠っている宝児に向かって反省をしつつ、目覚ましを止める。

ふと宝児を見れば瞼を閉じたままの宝児はいつもよりどこか幼く見えた。

しかも・・・可愛い。

「全く、こんな無防備な顔しちゃって・・・」

仙一はその眠り姫の頬に優しくキスをしてわずかに微笑み、

宝児だけはもう少し寝かせてあげようと自分はそっと起き上がろうとする。

すると・・・その腕を何かが掴んだ。

驚いて仙一が自分の腕を見れば、そこには宝児の手があった。

「・・・宝児?」

起こしてしまったのかと名を呼べば、しかし宝児は目を閉じたままだった。

そして宝児は安らかな寝顔のまま、聞こえるか聞こえないかという声でわずかに呟く。

「・・・・・・・セン」

「・・・ん?」

「もう少し・・寝よ・・・・・」

「駄目だよ宝児、起きなきゃ」

「セ・・ン〜」

「こら、甘えたって駄目だって」

「・・・スキ」

「え?」

「・・・・・・・・ス、キ・・だから」

「・・・・宝児・・?」

「・・行くな、セン」

「ほ、宝児・・」

そしてその後も宝児はむにゃむにゃと言葉にならない声を発しながら、あとはまた寝息をたてている。

そんな寝顔を仙一は心から愛しいと思い、その髪を優しく撫でた。

「俺はどこにも行かないよ、宝児・・・」

そう呟きながら、仙一は愛しい宝児をまた強く抱きしめた。

 

 

「で?」

「で?って言われましても・・・」

「それでお前はどうしたんだ」

「宝児を抱きしめてた・・ら眠くなってきて・・寝た」

「寝た?!」

「そう、そして今に至る」

「今に至るって・・お前なぁ・・・!」

「っていうかそういう訳で宝児も同罪だよね」

「はぁ?」

「甘えてきたんじゃん、スキとか言って俺を惑わして」

「なっ・・!」

「行くな、って甘えた声だしたの、宝児じゃん」

「・・・俺がどうしてそんなこと・・・」

「俺に離れて欲しくなかったのかな〜?可愛いv」

「離れて欲しくないなんて言う訳が・・!」

「言ったんだよ、俺の服をぎゅうって掴んで」

「何でお前はもっとちゃんと耐えなかったんだ!」

「宝児にそんな可愛くお願いされちゃあ、俺はひとたまりもないんだよ」

「・・・・!」

顔を赤くした宝児の頬を撫でながら、仙一は更に言葉を続ける。

「で、どうする?」

「・・・・・・・どうしよ・・・」

「ボスに正直に言っちゃおうか?」

「何を?」

「昨日すっごい盛り上がっちゃって疲れたため二人で寝坊しちゃいました、って」

「言えるわけないだろ!」

「わかってるよ、冗談冗談」

「その目は半分本気だったな・・・?」

「・・・(どうしてばれたんだろう?)」

「やっぱりボス怒ってるだろうか・・・」

「前バンが遅刻した時は『プロとしての自覚が足りんのだ!』ってめちゃくちゃ怒ってたよ」

「本当かよ・・・・!」

「どうしようね?ボスに怒られたくないでしょ、宝児としては。

特にバン辺りには見られたくないんじゃない?」

「いや、それよりも・・・・・」

「ん?」

「俺たち二人がそういう関係だと知られるのが一番まずい。

二人で寝坊して出勤なんかしたらそれこそ自分でこの関係を暴露してるのと同じことだろうし・・・」

「まぁ、そりゃそうだろうけどね。じゃあ、どうするの?」

「時間差・・・・・かな」

「じかんさ?」

「俺が先に行って、お前が後から来ればいい」

「え、宝児が先なのはどうして・・・?」

「・・・一分でも早く行った方が怒られないで済むかな、と」

「酷・・・」

「と、とにかく・・・先に行くからな!」 

そう言い残しさっさと着替えて部屋を出ていってしまったあまりにも酷い宝児の後姿をぼけ〜っと見送り、

仙一はため息をつきながらも自分も着替えようとベッドから降りた。

そして制服に手を伸ばすと・・・・・・。

「あれ?」

その瞬間仙一は顔を青くして咄嗟に宝児の後を追うために走り出した。

 

 

一方宝児は、デカルームの前で中に入る決意を固めていた。

(大丈夫、少し怒られて謝ってそれで終わりだ・・・・・・・大丈夫・・・・・・・・)

そう心の中で何回も唱え、ようやく中に入ろうとした瞬間。

「ホージー、そんなところで何してるんだ?」

後ろからそう声をかけられて、宝児はとびあがんばかりに驚いた。

ゆっくりと振り返れば、そこには・・・

「ぼ、ボス!」

そう、きょとんとした顔で宝児を見ているドギー・クルーガーの姿があった。

「ホージー、どうしたんだ?こんな時間に」

「い、いや・・・・・、あの・・寝坊してしまって・・・・・・!」

「寝坊、だと?」

その口調を怒っているのだと判断して、宝児は思わずすくみ上がる。

しかし、ともかくは謝らなければと、宝児は重い口を開く。

「あの・・ボス、すいませ・・・・・・・」

だが、その言葉を遮ったのは意外にも全く怒りを表していないボスの質問だった。

「お前が寝坊なんて珍しいな、どうかしたのか?」

「い、いえ・・・その・・・・・・」

本当のことなど言えるはずもなく、宝児はでっちあげの嘘をつくしかなかったため

慌てて頭をフル回転させながら適当な嘘を思いついてボスに言う。

「あの、遅くまで仕事の書類を片付けてたから寝れなくて・・・・・・・・」

「ほう・・・」

その宝児の言葉に、一旦は納得したドギーだったが、ふと宝児を見て途端に目を泳がせた。

しかもどこか所在無さげな様子に、宝児は不思議な顔でドギーを見て問う。

「あの、ボス・・?どうかしたんですか?」

その質問に、ドギーはどこかを向きながら「あー・・」だか「えー・・・」だか言っていたが、

やがて決意を決めたかのように宝児のほうを向いた。

「あのな、ホージー・・俺だってこんなことは言いたくないんだが」

「・・・?」

「嘘は、よくないな、・・・ホージー」

「嘘?」

ドギーの言葉に、咄嗟に宝児はどうしてばれたんだろう、という顔をした。

そして恐る恐るドギーにその言葉の真意を尋ねる。

「あの・・・何が、嘘?」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・?」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・?」

「・・・右の首筋」

「・・・・・・・・・・・・・・・え」

その言葉に、一気に青ざめた宝児は慌てて片手で首筋を押さえた。

考えなくても、思い当たることはある。

昨日の夜そこにキスマークを残され、更に今日の朝もそこにまた吸い付かれたこと。

どうしてそれをちゃんと隠しておかなかったのだろう、宝児は今更ながら後悔した。

「・・・それにな」

「え?」

今はその行為を思い出して真っ赤になっている宝児に、ドギーは更に言葉を続けた。

「・・・・決定的な間違いを、お前はしている」

「ま、間違い・・・・・・・?ですか・・・?」

そう言った瞬間、後ろから聞きなれた声とともにこちらに駆けてくる大きな足音が聞こえた。

「宝児―!」
足音とともに現れたのは言うまでもなく江成仙一その人だ。

そして息を切らしている彼は手には何かを持っている。

「遅かった、みたいですね・・・」

「ああ、少しな・・・」

「宝児、これ・・・」

そう言って仙一が宝児に手渡した手の中のものとは・・・

「・・・俺の制服」

「・・・・・・ホージー、お前が着てるのはセンの制服だ」

「み、たいですね・・・・・・・・・・」

そう言われて自分の着ている少し大きめの制服を見て愕然となった宝児を、仙一は慌てて支えてやる。

「大丈夫?宝児」

「・・・どうりでいろんな人の視線が・・・・・・・」

「え?どういうこと?」

「皆がコソコソ話してたのはこのことか・・・!」

「ちょ、ちょっとそれ・・・」

「そうだ、かなり多くの人に疑われたかもしれない・・・・・・」

くらり、と倒れかける宝児を全身で受け止め、仙一はドギーの表情を伺う。

それを受けたドギーは、少し呆れた顔で「自業自得だな」と呟いて、くるりと後ろを向いた。

「・・セン、ホージーを少し休ませてやれ」

「・・・そのつもりです」

我らがボスの温情に感謝し、そこから立ち去ろうとした時。

ふいにドギーが二人を振り返って言った言葉に、二人はドギーにも負けないくらい真っ青になった。

「そういえばお前ら・・・今日非番のはずじゃあ・・・・・・・・・」

「「あ」」

そういえば昨日宝児が伴番と非番を交換し、仙一が茉莉花と交換したため二人は非番だったのだと今更ながら思い出した。

「踏んだリ蹴ったり、だな・・二人とも。コレに懲りたら、少しは・・・ゴホン、次の日に響くのは・・自重も考えるべきだぞ」

「ぼ、ボス・・・・・・・・・!」

「わかっている、このことは誰にも・・・・」

そうドギーが言いかけた次の瞬間、ドギーの言葉を遮り、今度は別の声が響いてきた。

「あいぼー!」

「この声は・・っ!」

「センさんv何やってるの〜?」

「うわ、ウメコまで」

運悪く最強の刺客が二人の目の前に現れた。

それを気の毒そうに見つめながら、ドギーはその場をコソコソと後にする。

「あ、ぼ・・ボス!行かないで〜」

「ねぇ何でホージーさん、センさんの制服着てるの?」

「う、ウメコ!これは・・・」

「相棒、どうしたんだ?その赤い跡。虫刺されか?」

「バン、君には関係ない話だよ?」

「何だよ〜それ、ひどいなぁ!センちゃん・・ん?センちゃん、どうしてここに居るんだ?しかも二人で」

「そうよね、おかしいわよね?非番なのに」

「・・・・・・」

「二人で居るってことは、これから二人でどっか行くのか?」

「でも制服なんで着てるの?しかも逆に」

「・・・・・・・・・」

「ねぇ、なんで?」

「なんで?二人共」

「・・・・・・・・・・・・」

「ねぇってば、どうして?」

「どうして?!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

二人からの責めに、二人は何も言えず口を噤むしかなく、ただたじたじと後退するばかりだ。

その光景を遠くから見ていた茉莉花と鉄幹は、大きなため息をついた。

「ああいうタイプが、一番対応に困るのよね」

「何も考えてないくせに、爆弾発言するような、ですね」

「そう、しかも声が大きいから、いろんな人に聞こえてるってのも最強の証よね」

「ご愁傷様です、先輩たち」

 

 

 

 

「・・・・・・・やっぱ宝児、するのは3回までにしとかないと」

「何の話だッ!!!!!!!!」

顔を真っ赤にした宝児の左アッパーが炸裂し、仙一が医務室送りになったのは

非日常的な、SPDの朝の風景。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

あれぇ???????

すいません、出直しますっ!(泣)

こんなはずじゃあ・・・!つまらなくてごめんなさい!!!

お見通しなボスを出したかったのよー!

ほんまつまらないなぁ〜どうしよう・・・!

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