“ホージーの、あれは異常よ”

 

 

そうジャスミンに言われた。

そう。

一言だけしか言葉を返すことができなかった俺を、

ジャスミンは哀れみを含んだ目で見つめた。

しっかりしなさいよ、そう訴えていた。

こくん、と頷くとジャスミンは何も言わず立ち去った。

 

 

わかってる。

わかってるよ。

あれはおかしいんだって。

宝児のどこかが壊れてしまってるんだって。

 

だけど。

 

 

嬉しさに、頬を綻ばす俺の方が異常だろう。

 

 

 

 

 

dependence

 

 

 

 

 

最近のことだ。

俺がハクタクさんとともに行動をした時。

皆に無断でデカベースを離れた。

 

 

その夜のことだった。

 

 

 

 

 

こん、こん。

 

遠慮がちなノックの音が響いて、開いてるよと声をかけてやる。

きい、という音とともに現れたのは、案の定宝児だった。

いつも俺の部屋に来る宝児の習慣通りだと、俺はさほど気にせず宝児を部屋の中に招きいれ、

すでに宝児の特等席になっているベッドの上へと座らせる。

 

 

けれどそのときの宝児はどこか様子がおかしかった。

俯いたまま顔を上げようともしなかった。

どうしたの?問いかけても、返事はない。

 

「宝児・・・?」

 

優しく名前を呼べば、やっと顔を上げてくれた。

しかしその顔は何故か酷く幼かった。

今にも泣き出しそうな顔をしていた。

「宝児」

もう一度名前を呼んだ瞬間、俺は宝児に勢いよくひっぱられてベッドに突っ伏した。

荒々しく俺を自分の下に敷いた宝児は、俺の顔を上から見つめてくる。

なんで?

どうしてそんな泣きそうな顔しているの?

そう問いかけることもできないまま、俺は宝児の次の行動を待つことしかできなかった。

 

そして、微かに。

「・・・・・・・くな」

そう聞こえた声に、宝児の目をみつめる。

「なに・・?」

「いくな」

今度ははっきりそう聞こえた。

泣きそうな顔で、宝児は俺の胸倉を掴んだ。

「お前は、いくな」

どこに?俺はどこにもいかない。

そして、はっと気づく。

 

 

“お前は”

 

じゃあ“誰は”いってしまったの。

どこへいってしまった?

 

 

「俺を置いて、いくな」

宝児を置いていった人物。

それは一人しか居ない。

 

その事実に気づいた時、俺の胸はずんと重くなった。

あの銀髪が脳を掠める。

―――――――――――――― 彼だ。

 

 

「俺はいかないよ」

は、の部分を強調して言う。

そう憂鬱そうに答えた。

 

すると宝児は

 

 

「どこにもいかないって、一緒だって、約束したのに、したのに」

 

 

どこか狂ったようにそう呟いた。

俺の胸に顔を埋めながら。

 

「そうだよね、ごめん」

そう言ってやると、宝児の爪が俺の胸を引っかいた。

そうだ、お前が悪いんだ、と繰り返した。

うん、そうだね、ごめんね。

何度も何度も宝児の髪を撫でながら言った。

 

 

けれど

俺の心は今きっと真っ黒。

 

 

それはそうだ。

 

 

 

俺は

 

宝児と

 

そんな約束は、してないから。

 

 

 

いつ、誰としたの、そんな約束。

俺じゃない。

けれど今の宝児にはそんなことも区別がつかないのかね。

言いたいけれど、その言葉をぐっと押し込んでまた胸のあたりにある宝児の髪をゆっくりと撫でた。

 

 

 

宝児が、俺の腕を引っかいてくる。

そのひっかく手の延長には腕に巻きついた忌まわしい銀色の腕輪。

光を受けててらてらと光る。

それを無理やり奪って粉々にしてやりたい。

 

いつまで宝児を縛れば気が済むんだ、お前は。

 

「俺を、やるよ」

 

ふと、宝児がそう呟いた。

「俺を、お前のものにして欲しい」

 

なんてくどき文句・・・!

ナンセンス。

 

 

 

バカだね。

離れるのが怖いから、自分の体全部捧げて俺のものになろうって言うの。

俺のものになれば、安心できるの。

 

 

 

無理だよ。

宝児、君には一生あの影がついてまわる。

だから君は一生誰かを失うことへの不安を忘れることができないんだよ。

 

 

 

 

 

 

だけど、それをわかっていても。

俺は君を俺のものにしようってする。

俺だけのものにしようって願う。

だから、宝児を強い力でベッドに縫い付ける。

 

 

 

そばにあった布で、目隠しをした。

彼を、宝児が思い出せるように。

俺の顔を見たら、きっと宝児は罪悪感でいっぱいになってしまうんだろうから。

 

 

どうしてだろう。

自分が幸せになりたいのに

宝児が幸せになれるんだったら

少しは気が晴れるんなら

 

俺はどんなに不幸になってもいい、そう思えるのはなぜだろう。

 

 

 

 

「君が、好きなんだ」

 

 

 

 

そうだ。

結局は、それなんだ。

 

わかるかい?

君を抱きながら、

他の人を思う君の心を察してしまっている俺の気持ちが。

それでもいいよと、騙されてあげるよと思ってしまう俺の気持ちが。

 

 

 

わかるかい?

 

 

 

 

 

 

わざと宝児の弱いところばっかりを責め、大きな声を上げさせた。

そして、大粒の涙を流させた。

生理現象だって、そうさ、涙じゃないよね。

わかってる、君が誰かを思って泣いているだなんて、俺は知らないよ。

だから、泣いていい。

思う存分、泣いていい。

 

 

絶頂を迎えた君の腰を逃がさないようまた押さえつける。

「まだだよ」

恐れを表した宝児に構わず、俺はまた腰を打ちつける。

うあ・・・・っ、唸る宝児の額にキスを。

 

「俺はどこにもいかない、ずっと離れないから」

 

誓うようにそう言って、俺は宝児に気づかれないように泣く。

なんでもいい、君がいるなら。

そう思ってしまう俺は重症か。

 

 

「好き、どうしようもないくらい・・・好きなんだよ」

涙と、その言葉が宝児の上に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからだ。

宝児は、俺の不在を酷く不安がるようになったのは。

必ず宝児は俺がどこにいくのか、いつ帰るのかを聞いてくる。

それに俺は優しく答えてやるのだ。

 

「すぐ帰るよ、いなくなったりしない。俺は君を裏切ったりしないよ。約束、ちゃんと守るから」

 

そう、宝児があの彼に一番言って欲しかった言葉を言ってあげる。

すると宝児は微笑む。

柔らかく。

誰かの面影を微かに思いながら。

 

 

“ホージーの、あれは異常よ”

 

ジャスミンの言葉が脳をよぎる。

異常、そうなのかもしれない。

あれは、最早“依存”だ。

宝児が、誰を思っていようとも。

彼はもう存在しない。

依存の対象ではないんだ。

 

だから、あれは俺に対する、俺だけに対する、宝児の。

 

 

――――――――――――――依存だ。

 

 

それが嬉しい俺は、どうしようもないんだ。

もう、戻れないよ。

 

 

俺が居ないと生きられない、

 

そんな宝児を

 

そしてそんな宝児が愛しくてたまらない自分を

 

俺は目を細めて

 

――――哀れだ

 

と、笑うんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

いたたたたたたた。

わかってますよーたまに、いいかな・・?(何が)

ダーク路線です、緑青では始めてだね。

あーごめんなさい。(ひたすら平謝り)

題名は、依存という意味です。

不平不満ごもっとも・・・!許して・・・!

しかもなんか徐々に最初のテーマからずれてってるよ・・・・!!!!(汗)

心より、すいませんー!

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