甘えたいと素直に言えないんだ。

抱きしめて欲しいと口には出して言えないんだ。

判れ、バカ。

バカ・・・凌駕。

 

 

 

「じゃんけ〜ん、ぽん!」

昼下がりの恐竜やに凌駕と笑里の声が響き渡った。

幸人はカウンターに座ってそれを見ながらコーヒーを一口飲んだ。

ガキくさい・・・と思いつつもつい見入ってしまうのは

凌駕のじゃんけんの強さのためであった。

さっきから笑里は一度も凌駕にじゃんけんで勝てていない。

「凌駕さんじゃんけん強すぎですよ〜」

「へへ、俺は今まで集中してれば負けたことはないんだよ〜ん」

「くやし〜!もう一回」

「よぉし、じゃんけん、ぽん!」

また凌駕の勝ち。

一体どうなってるんだ?幸人は横目で見ながら不思議に思っていた。

「じゃあエミポン、勝ったら俺がなんでも1ついう事を聞いてあげるよ」

「ほんと?!じゃもう一回!」

「いいよ〜、じゃんけん、ぽんっ!」

「きゃ〜また負けた!何でそんなに強いのよぉ〜?」

「なんでかな〜?」

ち、余裕ぶりやがって・・・。

幸人はイラつきを覚える。

なんでか?それは至極当然。

笑里にかかりきりで自分を見ようともしない。

それはいつもなら何でもないのに今日は何か・・・むかつく。

ここは・・・。

「俺がやる」

幸人の申し出に凌駕と笑里は一瞬驚いた顔をしたが

すぐに笑里はその場を幸人に譲り、凌駕は笑顔で負けませんよ〜、と言った。

「じゃ、三条さん。いっきますよ〜?じゃんけん、ぽん」

ぐーと、ぱー。

ま、負けた。

「あはは、三条さん残念でした〜」

くそ、こいつなんでこんなに・・・。

気に食わないこいつを負かしていい気分になろうと思ったのに。

「もう一回!」

「じゃんけん・・・」

そこで幸人はあることに気づいた。

凌駕の顔・・・いつもの笑顔じゃなくて真剣な顔をしている。

恐らくかなり集中しているんだろう。

集中してれば勝てる、と言うことは・・・集中していなければ、勝てない。

なるほど・・・。

「ぽん」

「あ」

「また勝った〜!!!」

「お前卑怯だぞ!人が考え事をしている最中に!」

「じゃんけんの最中に考え事してるほうが悪いんでしょうが・・・」

ぶつぶつ言っていた凌駕だが、突然何かを思いついたらしく幸人に向かって言った。

「ねぇ〜三条さん、次勝ったらなんか下さいよ〜」

「・・は?」

「こんなに勝ってんだから何も賭けないなんてもったいないです」

このやろう、人の気持ちも知らずに。

でもいい機会かもしれない。

次で勝つ自信だってあるし、勝っていうこと聞かせればいいんだ。

そうだ、俺はこんな方法でしかこいつに何も伝えられない。

「・・いいだろう、ただし俺が勝ったら俺のいうこと聞いてもらうぞ」

「もちろんです!じゃあもう1勝負!じゃ〜ん・・・」

「凌駕」

「け〜ん・・・」

 

 

「好きだ」

 

「えっ?」

「ぽん」

 

ぱー、とちょき。

幸人の勝利だ。

「ちょ、ちょっと卑怯ですよそんなの!!」

「勝負に卑怯もクソもあるか」

「いつもあんなに言ってっていっても言わないくせに!」

「よぉし、じゃ・・・何を聞いてもらおうか?」

「さんじょ〜さ〜ん!!!」

情けない声を出すな、と幸人は凌駕を少し睨んだ。

何でも聞いて欲しいけど、何でも聞いてもらうわけじゃないんだ。

欲しいのは1つだけ。

「・・・お前、俺が好きか」

「も、もちろん好きです、大好きです!」

「じゃあ・・・」

そう言って幸人は凌駕の首を掴んで自分の方へ引き寄せて、

おでこに唇を寄せた。

ちゅ、という小さい音を残して幸人は凌駕に背を向けてしまう。

「さ、三条さん?」

「俺のしてほしいことは、お前のしたいこと」

「え?」

「お前が俺を好きなら、わかるだろ」

「さんじょ・・さん」

「早くしないと何にもやらせてやらないからな」

「さ、・・幸人さんっ!」

背中から抱きしめられる感触にとろけそうになる。

本当はずっとこうして欲しかったんだ。

勝負にかこつけないと言えないんだ。

「幸人さんったら・・・こんなことしないと素直に甘えたいって言えないなんて」

「・・・うるさい」

「可愛いな〜・・・」

「・・・バカ」

ち、こいつにはお見通しだったのか。

バカなのに、俺をよくわかってるじゃないか。

背中ごしに凌駕の体温が伝わる。

こんなことで満足する俺は一体どうなってしまったんだ?

「幸人さん・・・こっち向いて?」

肩を引っ張られて凌駕のほうを向く。

さっきの真剣な顔だ。

こいつには、かなわないと思った。

唇に凌駕の大きな手が触れる。

自然と目が閉じられた。

そうだ、これが欲しかったんだ。

甘えたくて、しかたなかったんだ。

やっと・・・・。

 

「あの〜」

「「?!」」

 

「そういうのは、私の目の前じゃなくて・・お部屋でいかがでしょうか?」

「え、エミポン!!!ごめん、見えてなかった!」

「・・・・・・・・・凌駕、先に部屋に行ってる」

 

「「えぇ?!」」

バカどものバカみたいな合唱を聞きながら、

俺は階段を一段、また一段上っていった。

 

こうゆうのも、たまにはいいだろう。

もうすぐ開く予定のドアがミシと音を立てたのを、俺は耳をそばだててあいつを待っている。

階段の音が徐々に近づくのを、心待ちにしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<コメント>

なんというか、趣旨が良くわからなくて、だめだぁ。

こういうのもたまにはいいだろう、ってことで。

最初は、じゃんけんで勝って終わりだったのに。

じゃんけんのイミないし。

文才・・・落ちてないかな(落ちてません)

青が積極的なのはあんまり好きじゃない(なら書くな)

ので今日も→(逃)

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