「じゃ〜男の子はあっちの部屋だから。覗いちゃダメだからね!」

バタン。

ウメコによって勢いよく閉められたドアが大きな音をたてて閉じて視界を遮る。

それを見送った俺たちは、早速ウメコに言われたとおりの部屋に移動した。

部屋って言っても、実際は物置みたいな所でダンボールやら何やらがたくさん積み上げてあって少し狭かった。

え〜こんなとこ宝児と二人で入って、しかも着替えだなんて。

俺、大丈夫かな・・・?

そんなこと思いながら隣を見ると、ふて腐れた顔の宝児がなんかぶつくさ言っていた。

「覗かないっっつーの・・・」

「まぁまぁ・・・」

 

今回の事件で俺たちはとある学校に先回りして侵入し、敵を待ち構えるという任務をうけた。

いつも通りの制服で行こうとしてた俺たち(男2人)だったが、

「それじゃつまんない!」

とウメコがなんか騒いだ。

「じゃ〜どうするんだよ!」

と宝児が聞くと、

「じゃ〜ん!!!これ見つけたの〜vvv」

と満足顔で差し出したのはどっかの高校の制服。

うわ、すごいウメコ!

君は最高だよ〜!

「こんなのどこで見つけたんだ〜!!!」

叫ぶ宝児に、ウメコは人差し指をくいっと真下に向けた。

「地下に、倉庫あるの知ってた?そこにね、結構いろんなものあるんだよ〜♪

多分張り込みの時用の変装グッズだと思うんだけど。

例えばね〜・・・ナース服とか、迷彩服もあったし、あとね〜・・・・・」

「・・・・・わかった、もういい」

「じゃ、着てくれるの?っていうか、着ないと行かない!」

と言うわけで、ウメコの素晴らしい押しきりにより俺たちはその制服に着替えることになったのだった。

ウメコの押し切りに感謝!

宝児の制服姿が拝めるなんて・・・!

感動に浸りながら制服に手をかけるとまた後ろからぶつぶつ言ってる声が聞こえる。

「何でこの歳で制服・・・・・・」

とか言いながら君しっかり着てるじゃない。

そう思いながらも宥める役を買ってやる。

「まぁ、こんな機会めったにないんだし、楽しもうよ」

「楽しむ?んなことできるわけないだろう。俺たちは任務で・・・」

「宝児は頭が固いんだよ。少し寛大にならなきゃ」

「・・・悪かったな、ジジ臭くて」

「もお、誰もんなこと言ってないだろ〜」

「・・ふん」

拗ねて少し頬を膨らます宝児が、もうなんかやばいくらい可愛い。

俺だけに見せるこういうとこがいつもの宝児らしくなくて、嬉しい。

で、ふと横目でまだ拗ねてるのかと隣をみたら、宝児がいつもの制服を脱いでるところだった。

もう衝撃。

目の前で徐々に晒されていく宝児の白い肌。

無駄の無い引き締まった体が目の前に・・・。

思わず見とれてしまって急いで視線を剥がそうとするが一足遅く宝児と目が合ってしまった。

「・・・何」

馬鹿正直に見とれてたなんて言える訳無いし、

「いや、別に?言ったら怒るから」

「・・・・・何だよ」

「昨日人の部屋来てあんなにショートケーキ貪ってたからお腹でてないかなぁ、って」

昨日の事を持ち出してみた。

昨日宝児を部屋に誘ってケーキを出したらあっという間に平らげて

その満足げな顔がまた可愛かったんだ。

と回想してたら・・・

「なぁにぃ〜?!あれはお前が『アレがあるから俺の部屋においで』とか言うから仕方なく行って

お前はショートケーキなんか食わないしもったいないから仕方なく食って・・・」

と宝児がクールなんて程遠く俺にまくし立ててきた。

あ、そっか、いつも甘いもの食って太ってしまわないか気にしてるもんね。

「ちょ、ちょっと落ち着いて。冗談だよ・・・いや、ほんとはね・・・綺麗だなと思って」

「は?」

「きめ細かそうじゃん、なんか。宝児の肌って」

「・・・そうか?」

「うん」

「ふ〜ん・・・」

ほんとのこと言うと途端におとなしくなってうつむいた。

変な宝児。

宝児ったら最近はずっと変だ。

俺と目が合うと慌てたように目を逸らす。

もしかして、俺の気持ちに気づいたちゃった?

でも宝児はどう思ってるんだろう?

知らない振りするのはどうして?

俺はどうしたらいいのか、わからないままだった。

 

そんなこと考えつつも制服に着替えてふと横を見ると、宝児は何か考え込んでるみたいだった。

あ・・・宝児ったら・・・

「宝児」

「わっ!」

宝児がボタン掛け違えてることに気づいて、声をかけたら宝児は柄にもなくすごく驚いていた。

え、どうしたんだろ?

俺のことそんなに怖いのかな。

それとも・・・・・意識してる?

「な、何だ」

「どうしたの、そんなに慌てて。あ、そうそう。宝児ボタン掛け違えてるよ、ほら」

そう言って宝児のYシャツに手をかけると宝児はすごく慌ててかぶりを振っている。

もう、少しくらいやらせてよ。

「い、いい。自分で・・・」

「はい、動かないで」

ぷち、ぷち、ぷち。

俺こういうの得意なんだよね。

と、上から影が降ってきた。

何かと思ったら宝児が顔を下に向けてじ〜っと見ていた。

・・・子供みたいで可愛い。

下から見上げて「何見てるの」っ笑ったら途端に顔を逸らして拗ねてどっかを見てる。

なんなのその仕草は。

俺をそんなに惚れさせてどうするんだろ?

「ほい、じゃネクタイ貸して」

「そんなのは自分で・・」

「昔っからネクタイ下手でしょ。ほら、貸して」

ネクタイ結ぶ権獲得。

ただこういうのやりたかっただけなんだけど。

やり始めればあんなに抵抗してた宝児もおとなしくなって、また俺の手元を見ていた。

静かな部屋でしゅるしゅる、という音とたまに聞こえる宝児の息遣いがやけに身近に感じた。

変な気分になっちゃうよ。

どうしよう・・・

「う」

「ん?ごめん、苦しかった?」

「いや・・・」

「って、顔真っ赤だよ。そんなに苦しかった?」

「・・え?」

ふと顔を見ると宝児はもうトマトみたいに真っ赤で、俺はすごくびっくりしてしまった。

だってこんな宝児みたことなかったし、俺ってば締めすぎたかと本気で心配したんだ。

けれど・・・

「宝児?」

名を呼んで見つめれば更に宝児の顔は赤くなっていく。

これはもしかして・・・照れてるの?

それを確かめようと、少し近づくと宝児は慌てて後ずさりしていく。

「・・・っ、わ」

「え、どうしたの?」

後ずさりしていく宝児が急にそこらに積み上げてあった荷物に足を取られてバランスをくずした。

危ない!そう思った瞬間にはもう体が動いていた。

宝児は同じ男なんだから心配することなんかないんだけど。

でも、宝児に傷をつけるのは嫌だった。

「う・・わっ」

「宝児!」

どさ。

俺たちは重なり合って倒れた。

俺の上に宝児が乗っている。

それだけでもう俺は・・・。

早く起きてくれないと止まんなくなっちゃうよ・・・。

「セン!」

「いてて・・・だいじょぶ?」

「大丈夫、ってお前こそ!俺の下敷きになんてならなくても!怪我は?」

「ん〜・・・俺は大丈夫だけど、宝児、ちょい・・・起きて?」

「あ、・・・悪い・・・!」

そう言って起き上がろうとする宝児とふと目が合った。

顔の真上に宝児が居る。

その宝児と、瞬間目が合った。

・・・視線を、はずせない。

宝児の顔はすごく真っ赤で、なんか申し訳なくなるくらいだ。

けれど、少しだけでも・・・意識して欲しいと思ってしまった。

「宝児・・・・顔、赤いよ」

「・・・っ」

そう言うと宝児が片手で顔を覆う。

その仕草が俺を更に煽る。

急に思い切り起き上がろうとした宝児のネクタイを思わず握ってしまう。

宝児が不思議そうな顔で俺を見据える。

整った顔が目の前にある。

もう俺の鼓動はやばいくらい高鳴ってる。

お願いだから・・・逃げないで。

「セン、離して・・・くれないか。どうして・・・」

「宝児が、逃げるから」

「逃げる?」

「そう・・・逃げるから」

しっかり握ったネクタイで宝児の顔は俺の上から動かない。

ごめん。

俺だってこんなチャンスをフイにできるほどそんなにお人よしじゃないんだ。

その唇が俺を誘惑するから・・・いけないの。

 

ぐい。

急に引っ張られたネクタイで宝児は俺に急激に引き寄せられる。

もちろん顔も。

 

唇・・・をわざと逸らしておでこにキスをした。

え?なんでだって?

もっと意識してもらえるように。

ゆっくり、ゆっくりでいいんだ。

「可愛い、宝児」

「・・・・・・・・・・・・〜!!!」

やっと俺のしたことを理解したらしい宝児が急にパニックになってる。

ものすごく可愛い。

なんでこんなにてんぱってんの?って聞いたらなんて答えてくれるんだろ?

俺のことどう思ってる?って聞いたら・・・?

そんなこと考えてると急に宝児が口を開いた。

「せ・・・せん」

「ん?」

「・・・俺、どうしたら・・・・・」

ええ?

どうしたらって・・・。

そんな事聞いちゃっていいの?

試しに、

「目、つぶったら?」

って言ってみたら

「・・・・・ああ、わかった」

って素直に目をつぶる宝児。

どうなってんの、コレ。

きっと宝児も混乱してるだけなんだろうけど、

これはどう見てもキスする雰囲気だよね?

しちゃってもいいの?

宝児、君は何を考えてるの・・・?

口を近づければ、硬く結んだ薄い唇がびくっと震えた。

逃げないの?俺の我慢を返してくれ。

そんなに無防備だと・・・ほんとにしちゃうよ?

宝児の息が唇に当たる距離まで近づいたその時。

 

コンコン。

わぁっ!!!!

宝児が素っ頓狂な声をあげた。

部屋のドアが大きく音を立てたのだ。

「ホージーさん、センちゃん、まだぁ?早くしないと置いてくよ〜!」

お邪魔虫なウメコの声。

「・・あぁ、今行く」

・・・残念だったなぁ。

けど、これでいいんだと思う。

宝児はきっと俺のことを少しでも意識してくれるはず。

もうどうしようもないくらい追い詰めて、逃がさない。

これは、俺の罠だ。

そしてその時はゆっくりと唇を奪わせてもらおっと。

まだまだチャンスはあるんだし。

「残念だったね」

「うわ!」

「何その反応。とにかく起きて。早く行かないと置いてかれちゃうよ〜」

「あ、あぁ・・・」

宝児、好きだよ。

そんな言葉を胸に俺はドアを開ける。

いつかこの言葉を伝えられるといいなぁ・・・

お願い宝児、俺に振り向いて。

後ろからの視線が、とても愛しかった。

 

 

 

 

 

→続く

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

え〜約束していた(してたか?)逆バージョンですv

いかがでしょうか???

拍手の感謝小説にいたします^^;

センちゃん、ちょい乙女過ぎてつまんないなぁ〜。

もっと黒くなきゃ。

今度からはもっとデカブラックなセンちゃんを目指しますからどうかお許しを。

では!

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送