今日、センと喧嘩をした。

 

喧嘩といっても、俺が一方的に怒ってただけ。

 

俺のなんとも我侭な言い草を、センは黙って聞いているだけだった。

 

そんなセンに、くだらないことで怒っている自分が恥かしくなってきて

センの前から走って逃げ出した。

 

そして今、俺は一人でデカルームにいる。

 

「はぁ〜・・・・・・・」

 

ちょっと喧嘩したくらいで、さっきから俺はため息ばかり。

 

いつから俺はこんなに弱くなった?

 

俺は一人でも平気なはずだ。

 

「そのはず、俺は一人でだって大丈夫・・・

センなんか居なくたって・・・・大丈夫・・・・」

 

そう呟きながら強がっている自分が、

なんだか情けないやら

それに・・・可哀想に思えて。

 

「なんで素直になれないんだ・・・」

 

弱くなったんじゃない、

センが居ないからこんなにも

辛くて、寂しい。

 

それが言えれば・・・

言えないけど。

 

悶々とする頭を壁に押し付けると、

どこからともなくまだ冷たい春の風が髪を撫ぜる。

 

「寒・・・・」

 

そう呟いて自分の体を抱きしめると

また襲ってきた風が背中に当たってわずかに震えた。

 

「今なら・・・後ろから抱きついたって殴らないから。

今だったら許すぞ、セン・・・・・・」

 

どんな上着だってあいつには勝てない。

いつもの様に、抱きしめろよ・・・

抱きしめて、暖めて欲しいのに。

 

また風が吹いても

俺の後ろにはセンが居ない。

 

ずっと探してたのに。

一人で大丈夫と強がっていた俺を

もう一人じゃないよ、と

優しく抱きとめてくれた

あの腕を。

 

心から安らげる
たった一人を。

 

やっと手に入れたのに。

 

なのに

どうして俺は自分から離してしまうんだろう。


もっと強く抱きしめて欲しい。

 もう離さないで欲しい。

なのに素直じゃない俺は
今日もそれを言えないままで。

 

切なく吹き荒れる風は

止まることなく俺の体を冷たくしていく。

 

「寒いぞ・・・・セン・・・」

 

呟く声は空気と交じって、消えて行く。

誰も居ない。

また一人になってしまうのか。

またあの腕を無くしてしまうのか。

 

そんなの、嫌だ・・・!

それを想像すると何故かどうしても怖くて

その想像を打ち消すかのように

思わず壁を握り拳で殴った。

 

すると・・・

『・・・ドガッ・』

え・・・?

 

突然聞こえた音に、俺は振り返る。

 

すると、床には壁にかけてあったボスが書いた掛け軸が、落ちている。

どうやら俺が壁をなぐった衝撃で落ちたものらしい。

 

「何やってんだ・・・俺」

呟いて、急いでその掛け軸に駆け寄る。

掛け軸を持って、元の場所に掛けようとするが・・・

 

「く・・・っ」

どんなに背伸びしても、あと2cmが届かない。

あとほんの少しなのに。

 

更に思いっきり背伸びして、また手を伸ばしたとき。

 

掛け軸が、浮いた。

 

正確には、俺の手にあった掛け軸が後ろから誰かの手によって奪われ、

その2cmをなんなく超えてそのまま元の場所へ戻った・・・だけのこと。

 

視界は後ろから覆いかぶさっているその『誰か』の影で暗くなり、

視線は『誰か』が誰であるかを確認した。

 

「セン・・・」

「ここで、いいんでしょ?」

 

そう言ってにっこり笑うセンを見ただけで

ほんの少ししか離れてないのに

会えた嬉しさからか

顔が朱に染まっていくのがわかる。

 

しかもさりげなくフォローする頼もしくて優しい仕草と、

壁に手をついて俺に覆いかぶさっているその状況に

少し胸が高鳴る。

なんだか一人で舞い上がってしまっているみたいで

少し、悔しい。


ずるい。

ずるいんだ、センは。

そんな仕草だけで俺を翻弄するなんて、ずるい。

それが出来るのは、やっぱりただ一人。

お前しか、居ない。

 

「セン・・・・」

「宝児、ごめんね」

「・・・?」

「俺、また宝児に悲しい思いさせて怒らせちゃったね。

ほんとに・・・ごめん」

 

何を言うんだこいつは。

悪いのは全部俺なのに。

 

勝手に嫉妬して

怒って

センは悪くないのに

センは俺だけを見ててくれていたのに。

 

俺って、最低。

 

「宝児を不安にさせた俺が・・・悪かったんだ」

「そんな事・・・」

「俺は宝児が誰よりも好きなのに

それが伝えきれてない俺が・・・悪いんだ」

「・・・セン・・・・・!」

 

でもって

こんなにこいつに

ここまで思われてるなんて・・・

 

俺・・

すごく

 

幸せだったんだ・・・・・・・・!

 

どうして忘れていたんだ。

こんな幸せがすぐ近くにあったのに。

 

この先

こんなに

こんなにも

幸せだなぁってこと
俺は忘れないようにしよう。

 

絶対に

忘れない・・・・・・・・・・。

 

「じゃ・・・それだけ」

 

そう呟いて、センが俺から離れて

背を向けてその場から立ち去ろうとする。

 

行かないで欲しい。

俺も、謝りたい。

 

でもそれがどうしても言えなくて。

 

ずっと憧れてたのに。

ウメコみたいに可愛い仕草をしながらセンと並んで歩いたり

ジャスミンみたいにセンのツボをついて笑わせたり

バンみたいに素直にセンに気持ちをぶつけたり。

 

そのどれも出来ないのはわかってるけど。

 

でもせめて・・・

せめて


センの前だけではもっと
素直な自分になりたい。

 

あんなに俺を好きと言ってくれるセンのために・・・。

 

ここで、素直にならなきゃ

俺は一生このままになってしまう。

 

あの腕を

離しちゃ

 

・・・駄目だ。

不器用だけど

ずっとしたかったこと。

 

言えないけど

伝えられないけど。

 

ずっとしたかったこと。

して欲しかったこと。

 

俺は急いで駆け出して

その背中に
ぎゅっとしがみついて

思いっきり抱きついた。

 

ずっとしたかったこと。

それは

 

センに


『甘えんぼ』

「宝児?!」

「・・・・・・セン・・・ごめんな」

 

そうちゃんと伝えたら

振り返ったセンに

 

ずっと待ち望んでいた腕に

やっと抱きしめられた。

 

「俺、少ししか離れてないのに・・・寂しかった・・・

ずっと・・・こうしたかったんだ

女々しいなぁ・・・」

「あぁ・・・・・・・・」

「宝児も、寂しかった?」

「んな訳・・・あるか」

「もう・・・素直じゃないんだから・・・・」

 

あぁそうさ。

俺はやっぱり素直じゃないけれど

 

でも強く

抱きついた腕の強さで

わかるだろ?

・・・セン

 

「どうしたの、そんなにしがみ付いて。

俺はどこにも行かないよ?

・・・積極的な宝児も、好きだけどね」

「うるさいな・・・・・・これは・・・」

「これは?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・甘えてるんだ・・・・・・」

 

 

 

「へ・・・・・・・・・・・・・?」

 

めったに見れないセンの心から驚いた間抜けな顔に

俺は思わず吹き出した。

すると、センも少し照れくさそうに、笑う。

 

 

「宝児の・・・甘えんぼ」

「お前限定で・・・な」

 

俺の言葉に微笑んだセンが

優しく唇を降ろしてくるのを

俺も受け入れた。

 

「・・・・・・っ」

「・・・なんか、甘い」

 

「・・・・・・・ホントだ」

 

 

その口付けは、

何故か

すごくすごく

 

甘かった。

 

 

 

 

 

 

 


ずっと探してた おっきくて安らげる
愛に包まれてる あなたの腕の中
もっと強く抱きしめて もう離さないで
素直じゃないあたしは
どうしようもなく
どうしようもなく

今 甘えんぼ

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

甘い!!!

砂吐く・・・

宝児乙女すぎるだろ!コレ!!!

 

でも、前からずっと書きたかった、

大塚愛さんの「甘えんぼ」を題材にした小説ですvvv

(勝手に歌詞引用しててやばいかも・・・・・・・・・・・!)(汗)

 

これ緑青ソングよね?!

歌詞に当てはめると宝児可愛い〜!!!!!!!!!!

ってなかんじにならない?

 

それをぶちこわした私の小説だったのだけど。

すまん・・・。

感想いただけたら泣いて喜びます!!!!!!

では〜vちゃお!

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