火のないところに煙は立たぬ。

 

 

 

その日、デカブルーこと戸増宝児は、デカベース内にある隊員食堂に来ていた。

この食堂は、デカベースに働く全ての従業員(もちろんSPDも含め)が集まる大きな食堂だ。

その大勢の人ごみの中で、一人で席につくのはどこなく寂しいような気もしたが、

仕方ないかと食事を注文して順番を待つ。

本当は誰かと(というか仙一と)来ようと思っていたのだが、運悪く誰も捕まらなかった。

と言うわけで短い休み時間に人を探し回る余裕もなく、宝児は一人でここにくる羽目になったのである。

ついてない、と一人ぼやきながらやっと注文したラーメンを取りにレジへと向かい

トレイを持って先ほどの席につこうとした矢先。

これまた運悪くある集団に捕まってしまった。

「戸増くぅ〜んvvv一緒にご飯食べてもいいかしら?」

そう、その甲高い声ですりよってくるのはデカベース内の花形、女子従業員達である。

従業員と言っても仕事はもっぱら事務。

だから彼女達は皆、まるで一般のOLみたいな格好をしている。

まさか嫌だ、とは言えずに一言だけ「どうぞ」と答える。

とすぐさま彼女達は嬉しそうに笑いながら宝児の周りを囲むように座る。

宝児は別に女性は嫌いではない、むしろ好きだ。

しかし、今目の前にいる彼女達は少し苦手である。

その理由は・・・

「ね、戸増くぅん、彼女できた?」

「最近戸増くん冷たいんじゃない〜?」

「そういえばこの前戸増くんが戦ってるとこみたよ〜!かっこよかった〜」

「相変わらず可愛い顔してるわね〜、私と付き合わない?」

「そういえばこの前誰か撃たれたって?大丈夫なの?」

「ねぇ私に誰かSPDのお友達紹介してくれないかしら???
この、四方八方から飛んでくる女性特有のとめどないおしゃべりだ。

せめて一つの話題について話してくれればいいのに、各々で別々の話題を振ってくるから対応に困る。

だから宝児は何も言えず(何も言えず、の方が正しい)にもくもくと目の前の食事をやっつけていた。
だが、そんな時彼女達の話の中にでてきた思わぬ人物の名前に宝児はすばやく反応し、慌ててその話題を聞き返す。

「今、仙一、とか言ったか?」

「言ったけど・・・?」

「センがどうかしたのか?」

「あぁ、仙一君モテるものね〜って話よ」

「・・・・・・・・・・・・は?」

「だからぁ、モテるのよ、彼。意外にもね」

「えっと・・それって・・・・・・」

「あ、もちろん戸増くんだってモテるんだけどね〜、何しろ・・・・」

「俺の話はどうでもいい、センがモテてるって・・・誰に?」

「決まってるじゃない、私たち女子社員の間では人気上昇中〜」

「そうそう、だって仙一君優しいし」

「なんったって癒し系だし」

「愛想もいいのよね〜」

「背高くてかっこいいし!」

「可愛いとこあるし〜v」

「それにすっごくおもしろいしね!」

 

「・・・・・・・へ・・へぇ・・・・・・・・・」

(し・・・知らなかった・・・・・!)

宝児は、表情には出さないもののわずかに動揺する。

そんな事実は全く知らなかったし、考えたこともなかったからだ。

(あのセンが・・・モテる?)

そんな宝児の内心に気づくはずもなく、彼女達は話を続ける。

「でさ、仙一くんて、どうなの?」

「ど、どうなのって・・・何が?」

「決まってるじゃな〜い、もちろん恋人とかよ」

「ぶっ!」

そのキーワードに、宝児は口に含んでいた麦茶を噴出しそうになる。

だが寸でのところで両手で口を押えてなんとか零さずに済んだ。

そんな宝児を女子従業員は不思議そうに見つめてくる。

「だ・・・大丈夫?戸増くん・・・・・・?」

「・・・大丈夫だ」

「それで、どうなの?」

「・・・・恋人、か?」

「だからさっきから言ってるじゃない」

「仙一君と仲のいい戸増くんなら知ってるでしょ?!」

「まぁ・・・・・・・・・・・・・」

「きゃあ、やっぱり知ってるのね!どうなの?いるの?」

あまりにしつこく迫ってくる彼女達に、宝児も嘘をつくわけにはいかず

「・・・・・・・・・・いる」

とだけボソッと答える。

まさかその相手が自分だとは悟られないように。

すると彼女達はそれを受けて急に悲しそうな顔になって大声を上げた。

「え〜!!!ほんとに?」

「嘘では・・・ない」

「うわ〜超ショック・・・・・!」

「仙一君、あぁ見えてちゃっかりしてるのね〜」

一気にがっくりと肩を落とす彼女達に、内心ひやひやしながらも

宝児はやっと食べ終わったトレイを持ってこっそりと逃げようと席を立つ。

しかしそれが叶うことはなく、宝児の制服の裾は彼女達にがっしりと掴まれていた。

「・・・何」

「ちょっと待って戸増くん、そのお相手って、誰?」

「・・・え」

まさか自分だとは言えず、宝児は口ごもる。

そして、何とか

「それはプライバシーだから、・・・言えない」

とそれだけをボソボソと答える。

もちろん、不満げな彼女達は、宝児にしがみついたままで

「じゃ、せめて、どんな子かだけでも教えて」と聞いてきた。

(どんな子・・・・・・?)

その彼女達のあまりのしつこさと、少しの自分の悪戯心に負けて、宝児は口を開いた。

「それはな・・・・・・・・・」

 

 

 

 

仙一は、その時宝児を探して廊下を歩いていた。

「あれ・・?どこいっちゃったのかな〜?」

そうぼやいて、周りをきょろきょろと見渡すと、遠くのほうに何かの集団が見えた。

(・・・?何だ、あれ)

仙一がその正体を見破ろうとする暇もなく、その集団は仙一の方に近づいてきた。

そしてその集団の正体がやっとわかった頃には、すでに仙一の体には沢山の女性達が巻きついていた。

その集団は先ほど宝児に絡んできていた女性達だった。

「はぁい、仙一君v」

「・・はあい・・・・・どうしたの、君たち。そんなに急いで」

「仙一君に会いに来たのよ〜」

「え、どうして?」

「仙一くん、おめでと〜!」

「え・・・?」

訳がわからず、不思議そうな顔をする仙一に、女性達はにっこりと笑って言った。

「仙一君、いい人いるんだって〜?」

「何で教えてくれなかったのよ〜!アタシ、狙ってたのに」

「え?え?え?ちょ、ちょっと・・・それ、何情報?」

「それは、秘密v」

「でも、どんな子かは聞いたよ〜♪」

「どんなコって・・・・?」

だって、俺の恋人は宝児だし・・・と、センは思う。

それが、外にばれるようなことは決してないはずだ。

2人ともそれは凄く気をつけている。

なのに、・・・・・・・何で?

とにかく、彼女達の話を詳しく聞いてみることにする。

「で、どんな風に聞いたの?」

「それはね〜・・・・・・」

 

「あの江成仙一がぞっこんになったほどだって」

「それでどうしても手に入れたいと思うほどすっごく可愛い子なんでしょ?」

「で、すごく頭が良い子なんだって聞いたよ」

「そんでもって仙一君がめちゃくちゃ甘やかしてるんだって?」

「でも仙一君をリードできるくらいしっかりしてる子なんでしょ?」

夜はいつもお互いの部屋で過ごして朝まで出てこないって、ほんと?」

「とにかく仙一君がメロメロになってるって聞いたけど」

「ケンカしても仙一君から先に謝っちゃうんだって?」

「それで・・・とにかく仙一君が、誰よりも大事にしてる子って・・・・・」

「しかも、俺の子猫ちゃんvとか言ったって・・・」

 

「あれ?仙一くん・・・?」

 

 

 

 

その頃、宝児は誰も居ないデカルームに戻っていた。

だが、その様子はどこかおかしい。

何故か、隠れるようにしてこそこそと歩いている。

「さて・・・町の安全の為にパトロールにでも行ってくるか・・・」

言い訳のようにそう呟くと、やっぱりこそこそとデカルームを出ようとしたその時。

「逃〜が〜さ〜な〜い〜よ、宝児v」

悪魔の声が、聞こえたような気がした。

後ろを振り向けずに、宝児は固まる。

「や、やぁ・・センちゃん・・・・御機嫌よう。では俺はパトロールに・・・」

「逃がさないって言ったよ?」

仙一は隣を通り過ぎようとする宝児の首根っこをはし、と掴んでにっこり笑う。

「俺の子猫ちゃんは、どんなお仕置がうけたいのかな〜?」

「せせせセン・・・何の話だ・・・・・・・・?」

「俺がいつケンカして先に謝ったかな?」

「お、俺は知らないなぁ!」

「俺がぞっこんでメロメロだって・・・?」

「お、俺パトロールに行かないと・・・」

「君が一日行かなくたって誰も死にやしないよ。

朝まで部屋から出て来れないことでも、しましょうか?

お仕置きも兼ねて・・・ね?」

「い、嫌だ〜!」

宝児は恐ろしさのあまり、仙一の手を振り切って思わず駆け出す。

しかし仙一はその後を追うことはせずに、ただ怪しくにやりと笑った。

 

そして仙一が

「宝児、お仕置されてきなさい?」

そう一言呟いた声は宝児に届いたかどうか・・・。

 

 

 

宝児はマシンハスキー目指し、廊下を全速力で駆けていた。

仙一の魔の手から逃れるためにはとにかく外へ!!!

宝児はそう心の中で叫びながら廊下を駆けて、あと少しでハスキーにたどり着く・・・

その一歩手前だった。

目の前にあの集団が現れたのは。

「戸増く〜ん!聞いたわよ〜!!!!!」

「何だお前ら!!!」

「おめでと〜!!!」

「何がっ・・・」

「恋人が居たんだってね〜!」

「何で言ってくれなかったの〜?私すごく狙ってたのにぃ!」

宝児はそこで何かを察した。

ま、まさか・・・

「あの戸増くんがもう誰よりも大好きだって言ったんだって〜?」

「そうそう、仕事で嫌なことがあると思わず甘えちゃうんだって?」

「とにかく落ち着いてて、大人な人だって」

「この前は戸増くんも安心してその人の膝の上で寝ちゃったとか」

「あと背が高くて、モデルみたいな人だって聞いたよ」

「っていうか、宝児くんってその人の前だとすごいキス魔になっちゃうんだって?」

少しでも離れると寂しくなって回りも憚らずに抱きしめちゃうんでしょ」

「しかも夜は戸増くんったら、離さないんだって!!!」

「とにかく、戸増くんが好きで好きでたまらない人なんだよね」

「あれ・・・戸増くん、どうしたの?」

 

 

・・・・・・・くっそぉ〜!!!センの奴、覚えてろ!!!!!

 

 

 

 

 

『火のないところに、煙は立たぬ』

噂話に振り回されるうちが花。

所詮は2人ともラブラブってなことで。

めでたし、めでたし・・・かな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

え〜最後、困った〜。

ちょっと駄作すぎるので一応拍手に。

・・・ごめんなさい。(謝っておく)

どうなんだ、これ・・・・・・・(汗)

 

 

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