I never be able to give up on you

So never say good-bye and kiss me once again

 

「蛮ちゃん・・遅いな〜」

雨の降りしきる午後。

銀次は憂鬱な気分で一人ホンキートンクにいた。

憂鬱の原因はもちろん蛮のこと。

蛮はパチンコに行ったっきりもう5時間近く帰ってない。

 

俺・・・雨、嫌いなのにこんなときに限って・・・。

銀次はその日何度目かのため息をついた。

大好きな大好きな蛮ちゃん。

こんな風に一人でどっか行かれると、捨てられたんじゃないかなんて

バカなことを考えてしまう。

蛮ちゃんに捨てられないように、

蛮ちゃんにつりあうように、

こんな事で不安になることがないように、

やっぱり俺はもっと強くなろう。

でも・・・やっぱり今日は側にいて欲しいのに。

早く帰ってきて、蛮ちゃん。

 

「銀次、そんな顔するな。

どうせすぐ帰ってするさ。それまでほら、これでも飲んでろ」

波児はそう言って銀次にコーンスープを差し出した。

「うん・・ありがとvでも、今俺そんな変な顔してる?」

「してるしてる。まるで捨てられた子犬みたいだぞ」

「・・・・捨てられた・・・・?」

「あっ!いや、そうじゃなくてな!え〜と・・・」

「いいよ、波児。俺わかってるもん。蛮ちゃんは必ず俺のトコに戻ってくるって。

あんな蛮ちゃんを・・・捕まえてられるのは・・・・・・俺だけだから」

なんの根拠も無い自信。

でもそうでもしないと俺、不安でいっぱいになっちゃうよぉ・・・。

どこにも行かないで・・・

どこにだって一緒じゃなきゃ嫌だよ・・・

俺は蛮ちゃんが全てなのに。

そう言って引き止められたらどんなにいいだろう。

でもそれが出来ない俺は心の中でそっと呟くだけ

今すぐに戻ってきて・・・・・・、と。

 

その頃蛮は思わぬ道草を食わされていた。

パチンコの帰り道、雨が降ってくるのを見て

あの大事な相棒が雨をひどく嫌うことを思い出し、早く帰ってやろうと思った。

思った、・・・のに。

「うわ〜ん、お母さ〜ん!痛いよ〜!!!」

そんな声がして振り向けば道路の隅っこに子供がうずくまってるのを見つけてしまった。

よく見れば膝から血が流れている。

なんとなくほっておけなくて、つい声をかけてしまった。

「おいボーズ、どうした?迷子か?」

「・・・おにぃちゃん、誰?」

「蛮ってんだ、よろしくな。おめぇは?」

「・・・・・ぎんじ」

あぁ、よりによってあの馬鹿と同じ名前かよ・・・。

これはいよいよこのままにしておけない。

蛮はとりあえず手当てと近くの病院にその子を連れて行くことにした。

その場にメモを残しておくことも忘れない。

最初は不審がっていたその子も、優しく手を引いてやれば素直についてきた。

もう少しだけ、待ってろよ・・・銀次。

 

「もう7時だよ〜!蛮ちゃん、何かあったのかな?迎えにいこうかな?」

「大丈夫だって、・・・しかしお前もあんな奴よくそこまで心配できるなぁ・・・。

あいつのどこがいいんだ?我侭だし、傲慢だし、おまけにスケベだし・・・」

「波児、言いすぎだよ〜!

そりゃ、蛮ちゃんは口が悪いから誤解されやすいんだけどさ、すっごく優しいんだよ。わかるでしょ?」

「まぁ、な・・・。でも疑ったりしないのか?

今頃女の乳でももみまくってんじゃないか、とか・・・」

「ん〜・・・不安・・・だよ、俺はいつでも。

蛮ちゃんは俺よりも女の子のほうがいいのかなとかよく思うけど・・・・・」

でも、俺を見てくれるときの優しい視線は俺だけのもの。

俺・・・乳もないし、可愛くもないけど、ちゃんと俺を見てくれるから。

でも時々不安になるときもあるけど・・・そんな時はすぐに蛮ちゃんに見透かされてしまうし。

蛮ちゃんに余計な気を使わせないように、俺は蛮ちゃんを信じる。

蛮ちゃんが大好きだから。

蛮ちゃんの全部が大好きだから。

 

どこにも行かないで、蛮ちゃん。

早く帰ってきて、今すぐに抱きしめて。

 

 

「クソ、随分遅くなっちまったぜ・・・」

蛮は舌打ちしながらもホンキートンクへの道を急いだ。

あの少年の手当てに付き合ってやって、泣きわめくのを押さえつけてなんとか治療を終えた。

少年の母親は手当てが終わった後に来て、たくさんお礼を言って親子仲良く帰って行った。

よかったと思う反面、あの寂しがり屋の銀次を一人にしていることをずっと気にかけていたのだ。

・・・泣いてやしないだろうか。

子供ではあるまいしそんなことはないとは思うが泣きたくても泣けない相棒のことだ。

心のなかでは泣いている事だってありえる。

はやる気持ちを抑えて、蛮は車を更に飛ばした。

 

「銀次!」

いきおいよくホンキートンクのドアを開ければ、

波児にシー、と静かにするように促された。

ふとカウンターを見れば銀次がうつぶせになって寝ていた。

ほっと胸を撫で下ろした自分に何となく腹が立って、蛮は悪態をつく。

「この馬鹿が・・・寝ないと人を待つくらいできねぇのか・・・」

「そう言うなよ蛮。ずっと不安がってたんだぞ。

俺がどんなに心配するなって言ってもずっと心配してな・・・。

あんまり心配するからついいじめちゃった位な」

「・・・波児、てめぇ・・・・」

「おぉっと、そんな怖い顔するなよ!

そんなことより早く銀次を連れ帰ってくれ。もう閉店時間なんだ」

時間はすでに12時を過ぎており、蛮は「悪かったな」と吐きすてて銀次を起こそうとしたが、

豪快な寝息をたてて寝ている銀次を起こすのはちょっと手こずりそうで

蛮は銀次を抱えていくことにした。

「世話になったな、波児」

そう言って店を出ると背中越しに波児が片手を挙げるのが見えた。

そして銀次を俗に言う『お姫さま抱っこ』というやつをして運び、車の中にそっとおろした。

安らかな寝息をたてて眠るその姿に少し苦笑しながら、蛮も車に乗り込む。

「悪かったな、一人にさせて」

聞こえてはいないだろうけど、面と向かってはきっと言えないから。

待たせてしまったお詫びに、銀次が起きたら久しぶりにうまいもん食べさせてやろう。

蛮は自分の考えに自分で相槌をうって、車を発進させた。

「蛮ちゃん・・・」

そう寝言をいう愛しい愛しい相棒を傍らに乗せて。

 

 

 

 

 

<続く>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<コメント>

初の続き物ですぜ!

ふふふ・・・・。

三部作なので、頑張ります!

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