うちのねこ

 

 

 

 

 

「あ、そうそう小津さんうちの猫も、発情期でしょ?ほとんど毎晩鳴いてるものね。

うちも猫飼ってるんだけどね、あれには困っちゃうわ。

そろそろちゃんとオスをあてがってあげた方がいいのかしら?

どう思います?小津さんは」

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 

 

 

 

普段から懇意にしていた隣の奥さんにそう声をかけられ、

蒔人は言葉をなくした。

とりあえず、あぁそうですネェははは俺はよく知らないんですよ母にまかっせっきりで!

なんて言って誤魔化して逃げてきたのはいいけれど

自分の家のドアを閉めそのドアに寄りかかれば自分の心臓はバクバクと音を立てていた。

なんてったって、蒔人は猫を飼っていない。

というかこの家に猫は存在しないのだ。

ま、重い当たる節はあるけれど。

蒔人は動悸を押さえつつ、今日は部屋に居ると言っていた翼の部屋へと走っていった。

 

 

 

 

「はぁ?発情期の・・猫だって?」

いつものように難しい言葉の一杯書いてある本を読みながら

翼はしかめっ面をした。

本を読みながら人の話を聞くのはやめなさい、と何度も言ったのに聞かない。

そこのことは癖になってるんだしもう諦めた、と蒔人は心の中だけで自己完結しておく。

だって今はそんな場合じゃないんだし。

お隣さんが言っていた猫の鳴き声とは

きっと、というか確実に

自分がほぼ毎晩『鳴かせている』目の前の弟の声に違いない。

ということは

「お前のあんな声がお隣さんに聞こえてるって事なんだぞ!」

そう大声を出せば、翼はうるさいなあと言って耳を塞ぐポーズをした。

「あんな声が聞かれてるなんて・・そんなのもったいないし恥ずかしいだろ、翼も!」

「・・もったいないんだ」

ふ〜ん、といった感じで少し嬉しそうな顔をする翼に、蒔人は思わず顔が緩むのを感じた。

この弟は、何故か昔から問答無用で可愛いのだ。

「って、そんな場合じゃない!」

ああ危ない、本題を忘れるところだったと蒔人は頭を数回横に振った。

そんな蒔人を翼は面白そうに見て、笑う。

「何慌ててるんだ、誰も兄貴と俺がデキテルなんて想像もつかないよ」

「も、もしかしたらってことがある・・」

「第一猫の鳴き声に聞こえるなんて、・・変なの。どんな声だよ・・」

そう呆れたように言って翼は一回だけ『にゃあ?』と鳴く真似をした。

それがあまりに可愛すぎて蒔人は血が沸騰するからやめてくれそれやばいから、

だのなんだのと意味不明なことを言って翼をなだめるしかなかった。

「それにしても、発情期の猫って・・・」

ありえないよなぁ、そう翼がまた呆れた声を出して上目使いで見てきたので

蒔人はあり得るな、と思った。

この猫は触れれば押さえられない声を漏らして可細く鳴く。

その声はまるで子猫のように。

すぐにトロンとするその瞳は餌を強請る猫のそれに似て。

なによりふわふわのその細い髪の毛は、撫でるのには最適だ。

猫のふんわりした感触によく似ている。

そんなことを思ったら目の前の弟が猫に見えてきた。

正確には猫耳をつけたらさぞ似合うかもしれない、なんて不埒な考えだったけれど。

訳の判らない衝動に駆られ、蒔人は翼の頭に手を置いてその茶色を撫ぜた。

怪訝そうな顔をしながらも翼はその手を振り払うでもなく大人しくしていた。

それをいいことに蒔人はそのおでこに優しくキスをした。

ちゅ、という音がなった瞬間、翼は凄い勢いで蒔人を見、

そのあと自分のおでこを押さえてかぁ、と真っ赤になった。

大事な本をベッドの下に落としたのにさえ自分では気付いていない。

そんな弟の

何度も繰り返す気持ち(つまり愛しいという感情)のままに

おでこを押さえている細い手をそっと掴んで顔から引き剥がし

赤く膨らんだ唇に自分のそれを重ねた。

翼の唇は見た目どおり柔らかくて甘くて病み付きになりそうだ。

翼はぎゅう、と目を力いっぱい結んでそれを受け入れていて

その表情はどこか昔よく見た幼い表情とダブった。

止められない衝動を抑えきれず、そのまま翼を押し倒せば

翼は途端に慌て始めた。

「ちょ、兄貴・・っ。なにやってんだよ」

「はいはい、いいこだから。大人しくしなさい・・」

「も、駄目だ・・!声が聞こえてるかもしれないんだろ・・」

「でも慌てる必要が無いって言ったのは翼だろ」

「そう言ったのに慌ててたのは兄貴だ!」

「翼、兄貴じゃなくて、なんだっけ・・?」

「・・・・・・っ、ま・・まきと兄ぃ・・・」

顔を背けてしまった翼の顔を、強引に自分に向けさせて。

その熱い頬を両手で包み込めば、翼は目のやりどころが無いといわんばかりに目を泳がせた。

「翼、ちゃんと俺を見ろ」

「・・やだ。できない・・・」

「翼はどうして俺の前でだけワガママになるんだ?」

「弟だから?って・・ちょ、どこ触って・・」

「どこって言われましても・・ここ?」

「セクハラだ・・・・。兄貴の癖に!ヤダって言ってるだろ」

「何がヤなんだ、あぁ・・声が聞こえるのが嫌なのか?」

「・・・・当たり前」

「さっき平気だとか何とか言ってなかったか」

「・・・・・・・実際こういう状況になるとなんか・・やなの!」

「じゃあ声が出ないよう我慢すれば」

「か、簡単に言うなよ!そんなのきもちよす・・・・・・・・!」

しまった、と口を押さえる翼に

蒔人は水を得た魚のように目に光を灯した。

そして意地の悪い笑みを浮かべれば、翼は悔しげに目を逸らすことしかできなかった。

「なんだって?今なんて言おうとした?」

「・・・・煩いなぁ・・、なんでもない・・!」

「・・気持ちよすぎて無理だって?」

「わかってるなら、言わせるなよ・・いじわる」

いじわる、って!

しかもちょっと上目使い。

そんな翼の行動に、蒔人はかああと頭に血が上るのを感じた。

「・・あんま可愛いこと言うなっ」

「わ!」

わわ、と翼が慌てたのは蒔人が翼の首筋に吸い付いたからで

必死に翼は抵抗するものの、蒔人はそこから口を離さなかった。

「・・っあ、そこ弱いって知ってるくせに!」

「知ってるから、やってるんだよ」

「ひ、きょうだぞ・・・・ん、や・・声が」

「声?」

「声が・・漏れちゃ・・・ひ、う」

肩を力の無い手で押し戻されながら、蒔人は少し考える。

声が漏れる、それは大問題だけど。

でも猫の声に聞こえるんなら、じゃあ簡単じゃないか?

「猫の声を出せばいいだろ」

結論から簡潔に言えば、翼はきょとんとした顔をした。

そしてすぐに意味を理解したのか、赤かった顔を更に赤くして抵抗した。

「な、何言ってるんだ!それって」

「猫みたいに鳴けば、問題ないだろう?さっき鳴いたみたく」

「ばっ・・馬鹿言うな!そんなのできるわけ・・」

「じゃあこのままでいいのか?お前・・辛くないの」

翼の認識できるほどには立ち上がっているものを指差せば、

翼は唇をかんで目を伏せ、ぶつぶつと何かを言い始めた。

「これは・・・・兄貴のせいで・・俺のせいじゃ」

「それにな、翼」

「・・?」

「・・・兄ちゃんのこれも、もう収まらないんです」

「・・っ!」

俺の言葉にそれをマジマジと見てしまった翼は、驚いたように俺の顔を見た。

「わ、若いね・・」

「お前には負けるけどな、だってもうこんなに・・」

「・・・・・っ、や、やめ」

「じゃないだろ、翼」

「ちょっと本気か?俺がそんなこと言ったら気持ち悪・・」

「くない!気持ち悪いどころか、可愛いぞ?

俺、その声・・・・聞きたい」

少し熱っぽくそう耳に流し込めば、翼はびく、と反応を返した。

「でも・・」

「・・もう我慢できないんだ」

「い、ぁ・・や、そんなの・・言えな・・・・」

「翼、鳴いて・・・」

そう言って翼の弱いとこに触れれば、翼は大きく弾けた。

しつこいくらい弄べば、声を我慢していた翼はもう我慢できなくなったのか

小さく小さく喘ぎを漏らし始めた。

にゃ・・あ、にゃ・・・・・・・ぁん!ん・・にゃ

ほんとに猫の鳴いているような声で翼は喘いでいる。

そのことが異様に俺を興奮させる。

あり得ない、こんなのおかしい状況なのに

無理やり翼にそんな声を出させたのに

俺はほんとどうかしちゃったのかもしれない。

か細く高い翼の声は本当に発情期の猫みたいだ。

それに興奮する俺も発情期なのかもしれない。

「春だし、な・・・」

「な、集中しろ・・馬鹿アニキっ・・・ん、やぁ」

怒られた、から俺は集中することにする。

そんなこと言って知らないからな、どうなっても。

洗い息遣いのままそう言えば翼はまるで猫のように

 

手加減して・・ね

 

と俺の頬をペロリ、と舐めた。

 

 

 

 

もう死にたい恥ずかしい生きていけない。

行為のあと翼はどん底まで落ち込んでいたが、

蒔人はあまりの幸せに天にも昇る気持ちだった。

「いやー、可愛かった!」

しみじみ言えば、ベッドに沈んだままの翼から枕が飛んできた。

それを顔でキャッチしつつ、翼のすぐ横まで行って

蒔人は翼の乱れた柔い髪を何度も何度も撫でてやった。

嫌がるそぶりもなく、それを甘受していた翼は

しばらくすると小さな寝息を立て始めてしまう。

口元は薄く開いていて、ときおりむにゃむにゃと動いた。

聞こえないけどゴロゴロ聞こえてきそうなその可愛さに

なんか、やっぱり猫みたいだ・・・・・

蒔人は、緩む頬を隠さずに翼の寝顔を堪能する。

誰にも見せたくないなぁ、こんな可愛い弟は、なんて思いつつ。

だがそこで、なぜかさっきのお隣さんの言葉が甦ってきた。

 

 

 

 

『そろそろちゃんとオスをあてがってあげた方がいいのかしら?』

 

『どう思います?小津さんは』

 

 

 

 

オスを、あてがう?

他の男に翼を触らせるなんて考えるだけでも恐ろしい。

いやいやいや、うちの子には絶対そんなことさせるもんか。

明日お隣さんにあったらそう言っておこう。

 

 

『うちの猫は、俺以外にはなかなか懐かないんで』

 

『しかもあまりに可愛いすぎて、他の奴になんか触らせられないんです』

 

 

『オスなんかあてがわずに

 

 

 

 

 

 

 

 

ずっと俺の傍に

 

居てもらおうと思うんですけど』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうですか?お隣さんは』

 

 

 

こう答えたらお隣さんはどんな反応をするだろう。

口をあけてポカーンとした表情のお隣さんを思い浮かべて笑いつつ

 

 

そろそろ弟離れしろよ、お前

 

 

思わずあまりに兄馬鹿な自分にそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

「お兄ちゃん、あんまり変なプレイしないでよ。

後、家の中に他に人は居ないかちゃんと確認したほうが、いいと思うなぁ」

そう麗に冷たい声でそう言われ

蒔人が廊下で顔を真っ青にして倒れたりしたのはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

え、緑黄なの・・・・?

どうしたの!(笑)

なんか無性に書きたくなりまして。

最後のうららんの台詞は

お隣さんに聞こえてるんなら同じ家の人にも聞こえてるよね

って話・・・・・・・・・。おいおい。

つーも宝児と同じく猫系統だと思います、なんとなく。

タレ目だけど!(こら!)褒め言葉です怒らないで・・・

続きが書いてみたい。

猫のことを近所の人から聞いたつーの反応とか(笑)

面白そー・・・・・・ですか?聞くな

モー逃げ!

 

 

 

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