午前2時。

すっかり暗くなった「恐竜や」へ、同窓会を終えた凌駕はそ〜っと忍び込むように入った。

誰も居ないキッチンを通り過ぎて凌駕はまっすぐ自分の部屋へ向かう。

眠い・・・。ちょっと飲みすぎたかな?

酒には強いと自負していた凌駕だが今日は日頃の疲れの所為かやけに眠い。

あらかじめしいておいた布団にバタン、と勢いよく倒れこむ。

今日は舞ちゃんと遊んであげれなかったから明日は沢山かまってあげよう。

三条さんの顔も今日は余り見てない・・・明日は・・・・・・。

そんなことを考えながら強い睡魔に襲われて凌駕は眠りに落ちた。

 

午前3時。

もう本格的な眠りについていた凌駕は、意識の片隅でなにか音を聞いた。

部屋の戸が開く音。

その部屋を開けた人物を確かめようとしたがどうにも眠くて目が開けられない。

誰だろう・・・?

でも目が、開かない。すごく眠いんだから今日だけは寝かせてよ・・・。

凌駕は残りの意識も手放して再び深い眠りに飲み込まれていった。

 

午前7時。

「おはよ〜ございます!」

昨日とはうってかわって気分がいい。

なのに・・・。

「うるさい」

幸人はとても機嫌が悪いようだ。

最近は挨拶をすれば少しだけでも返事を返してくれていたのに。

それにどことなく様子がおかしい。

どうしたんだろう?幸人さん。

気になりはしたのだが舞ちゃんの幼稚園の時間が迫ってきていたので

凌駕はとりあえずいったんそのことを置いておくことにした。

 

午後8時。

その日の夜、凌駕はどうしても幸人の様子がおかしかったことが気になり、

幸人の部屋を訪ねてみた。
「三条さん、入りますよ?」
ノックしても返事のない部屋の主に一言断って、おそるおそる中へ入ってみる。

真っ暗なので、電気をつけると整然とした幸人の部屋が現れる。

そこで凌駕はあることに気づいた。
布団にしわ一つない・・・。

あの充血した瞳、ボーっとしている顔。
もしかして三条さんは結構長い間寝てないんじゃないだろうか・・・。

昨日の夜部屋に尋ねてきたのも三条さんだったのかもしれない。

間違いない、でも一体どうして?

疑問ばかりが頭をよぎる。
「よし、こうなったら本人に直接聞いてみよう」
凌駕はそう決断して幸人の部屋をでた。

 

午後9時。
その頃、幸人はお風呂に入りながら悩んでいた。
凌駕が何か気づいているような気がする。

今日は一日中自分を見ていた。
あいつに相談するべきのだろうか?
凌駕ならきっと何とかしてくれるだろう。
でもそんなことはこの俺のプライドが許さない。
この三条幸人があんなものが怖くて寝れないだなんてとても言えたもんじゃない。
でも、昨日はあまりの眠さに意を決して凌駕の部屋に行った。
が、あいつはぐっすりと熟睡していて起きる気配すらなかった。
そんな状態の凌駕を起こしてまで相談するなんてバカバカしすぎる、

と思い結局昨日も問題は解決しないまま眠れなかった
こうなるともう手段がない。
らんるに相談するなんてもっての他。
アスカは相談には乗ってくれるだろうが解決策を知らないだろう。
他の奴らにその事を話すこともためらわれる。
どうしたら
幸人はすっきりしない気分のまま湯船からあがり、浴室をでた。
白のTシャツに茶色のゆったりとしたズボンを穿き、

髪を軽く一つに結んだ格好でキッチンに出る。

するとそれと同時に恐竜やの店のドアが大きな音をたてて開いた。
「三条さん!」
「凌駕
外から入ってきた人物は他でもない、凌駕だった。
「探しましたよ、三条さん!恐竜やにいないからてっきり外にいるのかと・・・。お風呂だとは盲点でした。
三条さん、俺三条あなたの力になりたくて探してたんです。ずっと寝てないんでしょ?

原因はなんなんですか?」
「何でそれを・・・」
「見てればわかりますよ。俺はいつも三条さんを見てるから。

そんなにつらいのなら俺が相談にのりますから。一人で抱え込まないで下さい」
「凌駕・・・」
なにかがストンと落ちたような気がした。

何でこいつはいつも俺を限りない優しさで包んでくれるのか。

幸人がなにも言えず立ち尽くしているので、凌駕はそっと幸人の背中に手を添えた。
「ま、立ち話もなんだから俺の部屋に来ませんか?そんな格好じゃ風邪引いちゃいます。」
凌駕に軽く背中を押され幸人はそれに素直に従った。

 

午後10時。

凌駕の部屋に来るのは何回目だろう?

いつみても凌駕らしい部屋だと思う。

「てきとーなとこに腰掛けちゃってください、三条さん」

適当な所と言われて、幸人はすぐ近くにあったベッドに座った。

「それで?眠れない原因はなんなんです?」

「・・・」

その原因を話すことにまだ決心がつかなくて、幸人は口ごもった。

「じゃ、昨日なんで俺の部屋へ?」

「お前そこまで・・・?!」

「はい、なんとなく三条さんかなって。やっぱりそうだったんですね。

一体どうしてなんですか?」

「・・・・あの部屋じゃ眠れなかったから・・・。

お前の部屋に泊めてもらおうとおもったんだ」

「・・・え?!」

「どうしても・・・あの部屋じゃだめなんだ。

だから・・・夜の間だけここにいてもいいか?」

いつもの幸人らしくない不安げな瞳。

長い髪からは未だに雫が落ちている。

お風呂上りだけあって上気した頬。

はだけたTシャツから白い肌が見える。

その全てが、凌駕の欲情をそそるには十分だった。

「・・・そんなこと言って、もしかして三条さん・・・誘ってるんですか?」

「・・・な?!」

そう言って凌駕は思い切り全身で幸人をベッドに押し倒した。

「『夜の間だけ』、なんてそうとしか聞こえないでしょ。ちょうどよくベッドに座ってるし」

「おっ、まえ!何考えてる!」

真っ赤になって抵抗する幸人にかまわず、

幸人の両手首を片手でまとめて幸人の頭上できつく掴んだ。

「いった・・・!離せ!」

何とか束縛から逃げようとするが、凌駕の手はびくともしない。

「・・・かわいいなぁ、三条さん。

それで抵抗しているつもりなんですか?」

「っ!!!こ、っの、馬鹿力!!!」

「そうですよ、インタープリターには力も必要ですから。

まさかこんなトコで役に立つとは思ってなかったけど」

幸人は何とかこの危機から逃れようと今度は足を蹴り上げてみた。

しかし凌駕はあっさりとあいているほうの手で押さえつける。

「残念でした、もういい加減諦めて観念したらどうですか?『幸人』さん?」

「い、やだ!ふざけるなよ!お前!!!」

「ふざけてなんか無い。俺は本気です、幸人さん。

本当に貴方が大好きです、だからこの気持ちが抑えられない。

正常な男なら好きな人にこんな格好であんなこと言われたら誰だって・・・」

「凌駕・・・」

いつにもなく真剣な顔で言う凌駕に、幸人は少し驚いて抵抗を緩めた。

そんな幸人を見た凌駕はにこ、と微笑むといつもの笑顔で幸人の頬を撫でて言った。

「と、いうわっけで〜!

ね、疲れたらきっと何もかも忘れてぐっすり眠れますよ〜?

俺、頑張りますから!」

「・・・頑張られても困るんだが」

「幸人さん・・・いいですよね?どうせもう、逃がす気は無いんですけど」

「・・・・・・好きにしろ」

「是非、そうさせていただきますv」

完全に抵抗をやめた幸人に凌駕は掴んでいた手を離して、幸人の顔に手を添えた。

「幸人さん、目・・・閉じて下さい」

「・・・・・」

恥ずかしさを堪えてギュっと目をつぶる幸人にどうしようもない愛しさを感じながら、

凌駕はそっと顔を近づけた。

その時・・・・・。

 

チュウ!

 

「ぎゃー!!!」

幸人が突然大きな声を上げて起き上がった。

「どうしたんですか?!幸人さん!!!」

「アレが!出た!!!」

錯乱して幸人はトリケラバンカーを振り回した。

「ちょ、落ち着いてください!幸人さん!!!・・・ぐぇ!」

振り回したトリケラバンカーが、止めようとした凌駕にの腹に当たった。

余りの痛さに凌駕はうずくまる。

「も、もしかして幸人さんが眠れなかった原因って・・・この・・・」

「ねずみなんか大嫌いだ〜!!!」

「ぐわ!!!」

「あっち行け〜!!!」

「ぐぇ!!!」

「消えろ!!!」

「ぎゃ〜!!!」

 

午後12時。

余りの騒音にアスカとらんるが音のするほうへ向かうと、

幸人に殴られすぎて倒れている凌駕の上に、

全力を使いきって寝不足も手伝いそこへ倒れこんでいる幸人の安らかな寝顔があった。

二人は何があったのかよくわからず顔を見合わせて不思議そうな顔をする。

忘れられていた唯一全てを見ていたトリケラとティラノは、

少し顔を赤くしながら二人に明日のネズミ狩りを提案するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<コメント>

ネズミ嫌いかどうかは知りませんが、そんな感じするな〜、と。

少し鬼畜な凌駕を目指したが失敗。

結局ギャグオチか。

たまにはシリアスもかいてみよう・・・。

・・・また今度()

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送