酔っ払いにしか言わないこと

 

 

 

 

コンコン

もう、深夜と言ってもいい時間なのに。

ドアを叩く音がして

なんだ、遅かったな・・・

なんて呟きながらドアを開けたら

そこにはやっぱりヤツが居て。

でも、

「ほぉ〜じぃ〜」

なんて呂律の回ってない口で言われて。

何故か倒れそうになってるその体を慌てて支えれば

「うわ、酒臭い!」

と、思わず叫んでしまった。

どうしたんだ、お前。

そう聞く俺に、センは

「うー・・さっき仕事終わった後に〜・・

ウメコがぁ、内緒で買ってきたから一緒に飲もうって〜」

「それで、飲んだのか?」

「飲んだよぉ〜、・・・・・かなり」

「かなりって。どれだけ飲んだんだよ」

「う〜ん・・わかんない〜」

わかんない〜と、語尾を延ばした口調のまま

俺に倒れこんでくるその大きな体を支えきれずに、

カーペットの上に二人倒れこむ。

「痛ったいな!お前」

「う〜・・ぐるぐる〜」

「お前がそんなに酔うなんて珍しいな」

「だってぇ〜・・ウメコが飲め飲めって・・」

「ウメコと、二人?」

「う〜・・あ〜・・・・そうだよ」

「・・・・・・ふーん」

俺がその支えてた手を離せば、センは支えを無くして床にぐしゃ、と崩れてしまう。

「・・・・ほーじ〜?」

「・・・・・・うっさい、早く寝ろ」

「床で?」

「床で!」

言い切って、足早にベッドに向かう。

と、急に後ろからまた覆いかぶさってきたセンにそのままベッドに倒されてしまう。

ボフ、と音がして毛布に沈みながら、自分の上に居るセンを睨む。

そうして、センの頬を思い切りつねってやった。

「いたたたたた」

「罰だ、思い知れ」

「なんだよぉ〜、怒ってるの?」

「べ・つ・に」

「怒ってるじゃあん、どーしたの〜」

「酔っ払いには、教えてやるか!」

「え〜?」

?マークを顔一杯に浮かべて、不思議そうな顔で俺を見てくるその潤んだ目に

仕方が無いことに俺の怒りも少し消えていく。

それどころか、笑いが漏れてきた。

「な、何なの〜・・・今度は笑い出した」

「ふふ、もー甘えただな、お前」

「そう?宝児にだけですよぅ〜」

「果たしてそうかな?お前結構誰にでもくっついていくくせに」

「ありゃあ?ヤキモチですかぁ〜?」

「ふん、お前じゃあるまいし」

「なんなのそれ〜」

「だってこの前スワンさんにまで」

「言わないでください」

「言う、言ってやる。

可愛かったなぁ、ヤキモチ妬くセンちゃんは」

「もう、意地悪なんだから」

「そうか?センにだけですけど?」

「そんな限定はいらないなぁ〜・・

どうせなら、俺にだけ優しくしてくれればいいのに」

「へぇ?俺はいつだってお前には優しいだろう」

「さて、どうでしょうか

だって今もなんか怒ってたじゃない」

「怒ってなんか、ないけど」

「宝児・・・一杯飲んでごめんね?そのこと?」

「・・・それは、許す。たまには、な」

「・・?じゃ、宝児を誘わなくて、ごめんなさい」

「いやそれも別に気にしてない。俺酒好きじゃないし」

「じゃあ、なんなのさぁ」

「だーれが、教えるか」

拗ねて尖ったその唇に、ちゅ、とキスをしてやって。

その頭を自分の胸に引き寄せて、今度はその頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

そのまま、首筋、肩、背中に指を這わせて。

驚いて顔を上げたその虚ろな瞳を無視して、今度は額にキスをした。

「うー・・何〜?」

「お前、顔真っ赤だぞ」

「それは宝児がセクハラするからでしょぉ」

「お前なんかいつもそれより酷いこと俺にするくせに」

「酷くないよ、愛の行為だよ」

「ぶ、お前マジで言ってんのか?」

「マジマジ〜、大マジですよお、俺は!

宝児、愛してます、大好きです!」

「はいはい、酔っ払いの戯言は聞きません」

「なんだよぉ、ほんとだってば.

なんならこの体にわからせてあげようかー?」

そう言って、俺の服をひっぱがそうとする酔っ払いから逃げて

うつ伏せになって背中を向けた俺に、センはそれでも後ろから覆いかぶさってくる。

「しよーよ〜、宝児〜」

「馬鹿、やだよ!あはは、変なとこ触るな!」

「させて、超したいよー」

「こ、んの!スケベ!逮捕するからな」

「宝児にならされてもいいよぉ〜」

「あれだ、婦女暴行罪で」

「宝児いつのまに婦女になっちゃったの!」

あははは、と笑い出すセンに、俺も一緒になって笑った。

はぐはぐと口を動かしていろんな場所に

甘く噛み付いてくるその唇がくすぐったいのもあったけれど。

二人で大笑いしながら、ベッドの上でじゃれ合う。

でも、ふとさっきまで怒ってたことを思い出して、

突然センの顔をじーっと見てやった。

こいつ、何にもわかってないんだよな〜。

ウメコが、お前を慕ってるって事とか。

二人で飲んだりなんかしたら、期待させるだけ酷いんだぞ?

俺は、お前を手放す気なんて無いし。

センも、俺から離れるなんてきっと考えてない。

それは、怖いくらいの自信があるんだ。

だけど、だけどな?

ウメコは女の子だから。

可愛くて、ほんとに可愛い女の子だから。

もし、なんてことを考えてしまうんだよ。

仲間なのに、大事な仲間だから。

信用したいし、信用できるんだけど。

でも、不安になるくらい、いいだろう?

俺はセンが好きなんだから。

「何、何見てるの〜?あ、かっこいいなぁって?」

「自惚れるなよ、セン」

「うわ、酷いなぁ・・・」

「わかった、わかった、ごめんな?」

ぐすん、と無くフリをするその顔を、

慰めるように優しく両手で押さえて今度はその鼻にキスをした。

「あのさ、お前、酔ってるよな?」

「・・・酔ってますけど〜」

「酔うと、記憶なくすほうか?」

「まぁ、そうかも。

明日の朝も起きて宝児の部屋に居ることにきっと驚いてると思う」

「ほんとか?」

「そんなんで嘘ついてどうするの」

「・・・すごい、酔ってるんだな?」

「酔ってるってば」

「どれくらい飲んだ?」

「日本酒の1升ビンと、焼酎と、ビール・・・」

「・・・ずいぶん飲んだな」

「飲んだってば」

「じゃあ、言ってやろうか」

「何?」

「すぐ、忘れろよ」

「うん?何だよ〜」

俺の腰にしがみついてくる、その頭を撫でて。

ついでに、軽くその耳に手をあてて塞いでやって。

きっと朦朧とした頭には聞こえないだろうけど。

 

 

 

 

お前は、俺のものなんだよ。

誰にも、渡さないからな。

離れてくなんて言ったって、俺が許すか。

どこに行っても、必ず戻ってこい。

 

俺は

お前が

 

―――――― 凄く、好きなんだからな

 

 

 

 

言ってから、急に恥ずかしくなって顔を真っ赤にする。

そして聞こえてないだろうか、とセンを見れば。

こいつ・・・、最低かも。

思わずそう呟いたくらい。

ぐーと健やかな寝息。

幸せそうな寝顔。

「何だって、俺はこんなのを・・・・」

そう言いつつも、顔はにやけている。

こいつがこんなに無防備に体を預けるのは俺だけだって知ってるから?

その間抜けな寝顔が凄く可愛いから?

理由なんて、よくわからないけど。

ちゃんと、ここにこの男がいることを、俺は感謝しよう。

「ちゃんとここに帰ってきてくれて、ありがとう」

こつん、とその額に額をくっつけて。

 

ま、酔っ払いにしか、言ってやらないけどな?

 

俺はそう笑いつつ、センと一緒にぬくぬくの布団に隠れた。

明日の朝は、ちゃんと起きれるかな。

寝ぼけて俺に抱きついてくるセンの与えてくれるぬくもりに包まれながら、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この俺が。

あれだけのお酒で酔うわけ無いじゃない。

ごめん、実はビール1杯しか飲んでないんだ。

ウメコは、ジャスミンに預けて逃げてきちゃった。

でも、このアイデアはウメコがくれたんだよ。

少しはヤキモチを妬かせなさいって。

ウメコって、いい子でしょう、ね?宝児。

だから、さっきの言葉は

ちゃんと俺の耳に届いてるんだ。ごめんね?

 

俺も。

俺もだよ。

宝児が、

 

凄く、好き。

 

 

 

 

大好き。

 

 

 

 

なんて、隣で何の疑いもなくぐっすり眠ってしまった宝児の耳に囁いて。

そんなに無防備だと、狼さんに襲われちゃうよ?

とか思いつつ、あまりの可愛らしい寝顔に、

手が出せない臆病な狼は、代わりにその唇にそっとキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

「ね、どう?上手くいった?」

「いったいった、ありがとうねウメコ」

「それはよかった!ビール一杯しか飲んでかないのに、上手くやったわね」

「いやー・・あ、それ内緒だからね」

「もちろん!でも、どんな感じだった?なんか言ってもらえた?」

「いやさ、凄く・・好きって・・・」

「マジ?!」

「大マジ!!」

キャーキャー騒ぐ二人の後ろに

怒りに燃えた青い影が見えたとか見えなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

・・・・・・・・・?

策士、セン様?

いやどうだろう。

酔っ払ったセン様相手になら素直になれる宝児が書きたかったのよー!

でも、あんまり素直じゃないし。

もっといろいろ書きたかった。

しかも最後オチをつけてしまった。

つけないで、何も知らない宝児でもよかったような。

でもほら、またうまく誤魔化されて知らないままになるかもしれないし。

でもバレてお怒り宝児になるかもしれないし。

どっちの結末になるかは、皆様のご想像にお任せします。

こんなんになるなんて・・・マジですいません・・・・

マジマジ書いてたら次の戦隊を思い出した(どうでもいい)

 

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